(※写真はイメージです/PIXTA)

最近ではドラマ『ドラゴン桜』の第2シリーズが放送されるなど、受験をテーマにした作品も増えている。主には、遥か高いレベルの学校への進学を目指す学生の葛藤を描く内容となるが、実世界では受験をするのは学生だけとは限らない。医師の朽木律子氏は、教師をしながら医大受験を経験したひとりだ。緻密な戦略を立てながらも、ときに楽観的思考を発揮させて挑んだ波乱の受験ストーリーを語ってもらった。

センター試験の結果は…

センター試験までに生物はかなり完璧に仕上がった。数学は虚数のところまで進められず、数十点のロスが見込まれた。センター試験で理科2科目受験必須の医大は選べない。

 

高校時代は文系だったので、理科は生物しか勉強したことがないからだ。しかし、国公立医大の中で、理科1科目受験でもOKなところがあることは確かめ済みである。

 

センター試験の結果は以下の通りだった。

 

英語、200点。満点。

国語、200点、満点。

社会(倫理)、100点、満点。

理科(生物)、90点。満点は100点。

数学、156点。満点は200点。

 

この、いかにも「文系でーす」といった点数を逆にうまく利用できるように、各医大の配点や二次試験の科目と照らし合わせていくのである。

 

まず、まっとうに四つ相撲で医大受験に向かうことはできない。マークシートは楽々解けても、記述式の生物・数学は全くもって解けないからである。だって文系だもん。

 

大体の医大は、二次試験で「四つ相撲方式=理科、数学、英語など」を記述式で解かせる。これは理系の受験生にとっての正攻法である。私が狙うのは「猫だまし方式=小論文、英語の長文読解、面接」重視の医大である。要するに二次試験で理数系科目がある大学は候補から省いていかねばならない。

 

まず、センター試験で理科2科目受験必須の医大にマーカーを引いて消していく。おお、かなり絞られた。次に「猫だまし方式」で受験できる医大を探していく。要するに「医大を受けるような生徒は数学は解けても国語は苦手であろう。そんな国語が苦手な者は医者として不適当だ。患者の心が読めて、患者の心に寄り添う、そういった学生がほしい! 論文重視だ! 面接重視だ!」という医大を探していくのである。

 

そして、センター試験の配点も重要であり、医大によって配点は変わってくる。国語を倍に換算するところ(200点取った私だったら400点扱い)、英語を倍にするところ、数学は逆に半分に圧縮して配点するところ、など。

 

私の場合、センター試験での理数系の配点を圧縮していたり、二次試験科目が、小論文、英語、面接だったり、といった大学を探すことになる。

低いリンボーダンスをすり抜ける作戦

大体、猫だまし方式での選抜人数はどこの医大でも少ない。100人定員の大学であれば、10人くらいが猫だまし方式であろう。国公立前期試験、後期試験では、後期試験で猫だまし方式を行っている大学が多かった。

 

その中で、私にもチャンスあり!と見つけたのは2校。しかし、1校はセンター試験での理数系科目の配点を高くしていたため、私が二次試験で小論文や英語で徹底的に高得点を取っても、センター試験の点数で足を引っ張られて不合格になる可能性もありそうだった。最後に残った1校は、後期試験での合格人数「若干名」の大学である(前期試験は合格者60人くらい)。

 

センター試験では数学よりも理科の点数を重視し、二次試験は大好物の英語、英語論文、日本語小論文、面接♡。いただき♡と思って、その医大の赤本を1冊買ってきた。1校狙い、それも合格人数「若干名」の、超低いリンボーダンスをすり抜ける作戦が整った

教師から医師へ。負けるかもしれない要素は一つだけ

リンボーダンスは上手くいった。

 

喋ることで生徒を惹きつけてナンボの予備校講師が面接で失敗するわけはない。毎日、100人全員の反応を見ながら授業を進めているプロである。5名の教授陣の前でいくつかの質問に答えるのは難しくなかった。英語講師が英語で点数を落とすわけもない。逆に出題者の意図が分かりすぎたくらいである。日々英語の問題を生徒に解かせている私には、問題作成者が想定している「正解」が透視できるのである。私は高校時代「コンクール荒らし」として、小論文のコンクールに応募しては、副賞の海外研修旅行、数十万円、などを稼いでいた。小論文も「任せとけ!」分野だった。

 

しかし、ひとつだけ、現役生、あるいは1浪生と大きな隔たりがあった。負けるかも知れない要素がひとつだけあった。年齢である。

 

10年遅れの受験。同点の受験生がいたら、18歳の若者を選ぶだろう。

 

落ちるかも知れない。いや、落ちるわけはない。試験を終えると、どんどんもやもやとしたものが湧き上がってきた。言ってみれば「10浪」の生徒が受験したようなものである。ひー! 私が合否を決める採点者なら、なんとか理由をつけて「落とす」ぞ。

 

合格発表までの1週間、「10浪生」として悩むのは嫌だ。

 

よし、海外へ脱出だ! 存分に癒やされに行くぞ! 選んだ地はバリ島。

 

その旅がまた私の人生の大きな転機になるとは思わずに、サンダルをつっかけて飛行機に乗り込んだ。
 

 

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