信託は委託者、受益者、受託者、信託財産からなる
「自分が、万が一動けなくなったような場合でも、財産を誰かに管理してもらい、そこからの収益で生活できるようにしてほしい」、あるいは「大変世話になった恩人の生活を、所有する賃貸マンションの賃料収入でサポートしている。私が死んだ後も、誰かにサポートを続けてほしい」などと思ったことはないでしょうか。
そのような希望をかなえるための方法として信託という制度があります。では、そもそも信託とはどのような行為なのでしょうか。信託法は、信託を次のように定めています。
「この法律において『信託』とは、(中略)特定の者が一定の目的(専らその者の利益を図る目的を除く。同条において同じ。)に従い財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為をすべきものとすることをいう。」(信託法2条1項)。
そして、信託法2 条2 項各号及び3 条各号に掲げられている方法とあわせて信託とは何かを考えてみると、
①信託契約、委託者の遺言、または公正証書等による自己信託といった信託行為により
②特定の者(信託財産を受託した者=受託者)が
③財産を有する者(信託財産を委託した者=委託者)から所有権を移転された財産(これを信託財産という)を
④一定の目的(信託をする目的=信託目的)に従って
⑤財産の管理または処分、その他の当該目的達成のために必要な行為をする
ということになります。
信託財産を長期的に管理する機能を相続に生かす
信託には、財産を長期的に管理する機能があります。この機能をさらに細分化すると(イ)意思凍結機能、(ロ)受益者連続機能、(ハ)受託者裁量機能、(ニ)利益分配機能となります。
これらの機能を簡単に解説すると以下のようになります。
(イ)の意思凍結機能とは、信託設定時の委託者の意思を、委託者が意思能力を喪失したり死亡したりという個人的事情の変化が生じたとしても、設定当時の契約通り長期間維持する機能です。
(ロ)の受益者連続機能とは、委託者によって設定された信託契約の内容を長期間固定しつつ、信託受益権を連続して複数の受益者に帰属させるという機能です。信託制度が有する意思凍結機能と受益者連続機能が連携することにより「後継ぎ遺贈型の受益者連続信託」が可能となります。
(ハ)の受託者裁量機能とは、受託者が幅広い裁量権を行使して、信託事務の処理を行う機能のことです。例えば、委託者が信託設定後に介護に最も献身的であった者を受益者に選定する裁量権を、受託者に付与することができます。
(ニ)の利益分配機能は、信託の最終的な目的として、信託の元本ならびに収益を受益者に対して分配することができる機能です。
次回からは、より具体的な不動産信託の活用法を見ていきましょう。