キャリア官僚を逮捕…元銀行員が見届けた「悪夢のような日々」 (※写真はイメージです/PIXTA)

リーマンショックが起きた当時、元興銀マンの堀内勉氏は森ビルの財務担当役員として、メガバンクや社債市場を相手、悪銭苦闘を繰り返していたという。みるみるうちに手元資金が枯渇していくのを目の当たりにして、恐怖と闘いながら資金繰りに奔走するなか脳裏をよぎったのは、1997年から98年にかけて襲った日本の金融危機だった。※本連載は、堀内 勉氏の著書『読書大全 世界のビジネスリーダーが読んでいる経済・哲学・歴史・科学200冊』(日経BP)より一部を抜粋・再編集したものです。

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リーマンショックでは資金繰りに奔走

2008年から始まる世界的な金融危機、世にいう「リーマンショック」が起きた当時、私は都市開発デベロッパーである森ビルの財務担当役員、いわゆるCFO(最高財務責任者)として、メガバンクや社債市場を相手に、1兆円以上に膨れ上がった負債をコントロールしなければならない立場にありました。

 

森ビルは非上場会社でしたので、主な資金調達ルートは銀行と社債市場しかありませんでした。東京都心に保有する優良不動産に膨大な含み益がありながら、みるみるうちに手元資金が枯渇していくのを目の当たりにして、恐怖と戦いながら資金繰りに奔走する日々でした。

 

その時に私の脳裏をよぎったのは、かつて自らが銀行員時代に経験した、1997年から1998年にかけての日本の金融危機でした。当時、私は、今はみずほフィナンシャルグループのひとつになった日本興業銀行(興銀)の総合企画部で、自己資本調達、格付け、投資家向けIR(インベスター・リレーションズ)を担当していました。

 

1990年の株価大暴落から始まったバブル崩壊は、この頃にはもはや、なんとか騙し騙しやっていける段階を通り過ぎていました。これに加えて、当時の大蔵省(現在の財務省、金融庁)への過剰接待問題をきっかけに東京地検特捜部の捜査が各金融機関に入ったことで、日本の金融システムは雪崩を打ったように崩れ始めました。その過程で、北海道拓殖銀行や山一証券が破綻し、その危機はそれまで絶対的な信用を誇っていた大手銀行にも迫りつつありました。

 

今では信じられないかもしれませんが、日経平均株価が史上最高値の3万8957円を付けた1989年末のバブルピーク時の興銀の株式時価総額は、NTTに次いで(日本だけではなくて)世界第二位だったのです。

 

少しテクニカルな話になりますが、企業の信用力を示す格付けについても、ムーディーズとS&Pという世界の二大格付け機関からそれぞれAAA(トリプルA)、合わせて6A(シックスA)という格付けを与えられ、世界最高の信用力を認められていました。それが、十年も経たないうちにここまで凋落し、追い詰められていくとは、想像さえしていませんでした。

 

この接待汚職事件は、当時の第一勧業銀行利益供与事件における、大蔵省の検査の甘さが総会屋(株主としての権利行使を濫用することで会社を脅して不当に金品を収受しようとする特殊株主)への焦げ付き融資の拡大につながったとして東京地検特捜部が捜査を開始し、都市銀行、長期信用銀行、大手証券会社などへと連鎖的に拡大していきました。

多摩大学社会的投資研究所 教授・副所長
多摩大学大学院 特任教授 ボルテックス100年企業戦略研究所 所長

東京大学法学部卒業、ハーバード大学法律大学院修士課程修了、アイ・エス・エル(ISL:Institute for Strategic Leadership)(SLP)修了、東京大学 Executive Management Program(東大EMP)修了。

1984年日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。興銀証券(現みずほ証券)、ゴールドマン・サックス証券を経て、2005年森ビル・インベストメントマネジメント社長に就任。2007年から2015年まで森ビル取締役専務執行役員兼最高財務責任者(CFO)。

ボルテックス100年企業戦略研究所所長、社会変革推進財団評議員、川村文化芸術振興財団理事、アジア・ソサエティ・ジャパンセンター・アート委員会共同委員長、田村学園理事・評議員、麻布学園評議員、軽井沢ソーシャルデザイン研究所理事、ダイアローグ・ジャパン・ソサエティ理事、アクアイグニス取締役会長、経済同友会幹事、書評サイトHONZレビュアーなどを務める傍ら、資本主義の研究をライフワークとして、多様な分野の学者やビジネスマンと「資本主義研究会」を主催している。

著書に『コーポレートファイナンス実践講座』(中央経済社)、『ファイナンスの哲学』(ダイヤモンド社)、『資本主義はどこに向かうのか』(編著、日本評論社)。

著者紹介

連載哲学と思想、経済と資本主義…「人類の知」の進化を紐解く

読書大全 世界のビジネスリーダーが読んでいる経済・哲学・歴史・科学200冊

読書大全 世界のビジネスリーダーが読んでいる経済・哲学・歴史・科学200冊

堀内 勉

日経BP

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