写真:スコピスト(手術中のカメラ持ち)としての役割を担うNP

医師の数に対して患者数が増えすぎると、診療が行き届かないという事態が起きる。重篤な症状を抱えた患者であれば、危機的状況となる。そんな現場での活躍が期待されるのが、「NP(Nurse Practitioner)」だ。いったいどれほどの範囲での対応が可能なのか。実際に藤田医科大学病院でNPとして活動する永谷ますみ氏に、働き方改革が進むなかでの問題点などを含めて詳しく紹介してもらう。

欧米では人気の職業であるNP(Nurse Practitioner)

欧米において、医師と看護師の中間の役割(中間職種:Mid-level Provider)である NP(Nurse Practitioner:看護師出身)やPA(Physician Assistant:様々な職種出身)は、やりがいがあり給料もいいので大変人気のある職業となっている。

 

NPやPAは北米で始まったが、すでに50年以上の歴史があり、患者にとって安心で安全な医療の提供や医師の負担軽減に大きな役割を果たしている。欧米のNPやPAは州や国によって可能な医療行為に違いがあるが、検査、診断および処方も認められている。

日本においても法制化されたNPの役割

医師の長時間労働が問題となっている日本においては以前からその必要性が議論されており、2008年になってようやく一部の看護系大学院で試行事業としてのNPの養成が始まった。その後2015年10月に『保健師助産師看護師法』が一部改正され、「特定行為に係る看護師の研修制度」が法制化された。今まで医師の直接指示が必要であった医行為の中で、特定行為区分(表1)に示されている特定行為の研修を修了した看護師は、予め作成された手順書に提示されている病状の範囲内であれば、医師の指示を待たずに実施することが可能となった。

 

表1
表1

 

欧米のNPのように処方権はないが、日本版NP(特定行為研修修了看護師)による特定行為が可能となったことにより、医療現場における働き方改革が急務とされタスクシフティングが推進されている日本では、チーム医療のキーパーソンとして大変重要な役割を果たすと期待されている。

看護師として感じた「限界」

私は看護師として約18年間、ICU、循環器科病棟、心臓血管外科病棟などで働く中で、侵襲的な検査や緊急手術、患者の急変対応などで多忙を極める医師を目の当たりにしてきた。医師が患者を待たせることも多く、その日の治療スケジュールが滞ることも日常茶飯事であった。

 

例えば、本来なら朝には人工呼吸器の管を抜去するはずの患者も、医師の手が回らないため後回しとなることも多くあった。また緊急手術のため、医師からの治療方針や経過説明がなかなか聞けず不安と苛立ちからか感情的となった患者から怒鳴られることもあった。

 

 

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