仲の良かった兄弟関係が、弟の退職で一変
清水さんの父親は、15年前に他界しました。その当時、福岡県にある父親の自宅には清水さんの実母と、50歳半ばになる実弟が住んでいました。その時、勤務医である清水さんは、すでに結婚して都内のマンションに妻と2人の子どもの4人暮らしをしていました。
弟は、未だ独身で、地元の海苔工場で交替勤務をしていました。弟は「自分は未婚で、実家に住んでいるので、実家の名義を半分自分にしてほしい」と言ってきました。母親は、次男のことを不敏に思い、自宅の土地、建物の名義を母親2分の1、弟2分の1にしようと言い、清水さんも賛成し、遺産分割協議は終了しました。
清水さんと弟は今まで頻繁に連絡を取り合っていましたが、10年ほど前から弟の様子が変わったのに気付きはじめました。SNSで連絡をしても返信が遅くなり、しばらくすると、まったく返信が来なくなってしまったのです。電話をしてもつながりません。さすがに心配になった清水さん。母親に尋ねると、弟は数年前、会社での人間関係が原因で、会社を辞めてしまい、しばらくしてからは家に帰ってきていないというのです。
弟は、会社を辞めてから自宅では自室に籠りきり、すぐにどこかに行ってしまっていたそうです。次第に弟は家に寄りつかなくなり、最終的には自宅に帰ってこなくなりました。清水さんは、驚きのあまり何も言えなくなりました。そのとき、清水さんは弟に電話をかけることをしませんでした。もしかしたら、繋がるかもしれないのに、かけなかったのは、会社を辞めた弟を軽蔑したからでした。それから10年経った現在まで、清水さんは、苦悩を自分の中にねじ伏せ、今まで何もなかったかのように過ごしてきたそうです。
判明したのは弟の陰謀詭計
しばらく帰っていなかった福岡の実家に帰ってみて、さらに分かったことがありました。1つは、弟が母親の貯金通帳を持ち去っていたことです。「高齢者だから」という理由で母親から通帳を預かったようですが、詳細は分かりません。母親に聞いても「よく覚えていない」というだけです。自宅に帰ってこないところをみると、お金を使いこんでいる可能性は十分にあります。