(※写真はイメージです/PIXTA)

都内の病院で亡くなった、近しい身寄りのない高齢男性のAさん。最後の願いは、亡き妻と同じ海へ散骨してもらうこと。しかし、荼毘に付されるまでの諸々の支払いを遺産から行うには、会ったこともない相続人を探し出し、その手を借りることが不可欠だった。本記事では、多数の相続問題の解決に取り組んできた司法書士の近藤崇氏が遭遇した、まじめに慎ましく暮らしてきた高齢者の切な過ぎる死後と、その解決策を模索していく。

入院・介護費用、葬祭費用の支払いは宙に浮き…

また、亡くなった方が生活保護を受給しておらず、かつ遺留金がある場合、葬祭費用を出すことに難色を示す市区町村も多い。生活保護を担当する部署では、亡くなった人に遺留金があれば、税金を使わずに遠縁の相続人に葬儀を負担させることも、彼らの仕事といえば仕事だからだ。

 

生活保護法第18条では、対象はあくまで「生活保護の受給者」を想定している。今回のケースは、同条第2項第2号の「葬祭を行う扶養義務者がない場合」にあたるケースなのかもしれない。

 

そうするとAさんを認知をした父親の子どもたちにあたる兄弟姉妹は、一応は3親等の扶養義務ではある。けれども、そもそもAさんと生前に一度も会ったことすらない可能性が高い。ましてや彼らに連絡を取る人もいない、わざわざ手間や費用をかけて調べる人もいないし、教える人も誰もいない、という状態なのだろう。

 

今回のようなケースで、亡くなった方の銀行預貯金を誰も下ろすことができないような場合は、行政が最低限の葬儀費用を負担しても然るべきであると思う。

 

こうした引き取り手のない遺骨について、正式なデータは持ち合わせていないが、新聞報道によると横浜市でも年間1000体以上、大阪市でも3000体ほど出ているという。

 

現状では病院や介護事業者、介護用品業者や葬儀費用などの各種の未払金は未払金のままだ。各業者は泣き寝入りせざるを得ない。一方でAさんの預貯金は銀行でそのまま眠ることになる。いわゆる休眠預金だ。こうした休眠預金といわれる預金は、日本全国年間で700億円ほど発生していると言われている。

 

いずれにしてもAさんが生前に周囲に伝えていた最後の願い、妻と同じ海に散骨して欲しいという願いは、儚い夢となってしまった。

 

Aさんの遺骨は、亡き妻と同じ海に散骨されることもなく、いまも暗い保管庫に置かれたままになっている。

 

*本件は筆者の業務上の経験に基づき記載しております。個人情報保護のため、内容は一部改変を加えております。

 

 

近藤 崇

司法書士法人近藤事務所 代表司法書士

 

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