(※写真はイメージです/PIXTA)

コロナ禍の影響により、米州のM&A市場は一時冷え込みを見せたものの、その後大きく回復し、M&A業界にとって楽観視できる状況となってきました。とはいえ、地域間の回復には明らかなばらつきもあります。現在の状況と今後の展望を見ていきます。※本記事は、Datasite日本責任者・清水洋一郎氏の書き下ろしです。

ディールをリードしたのは「金融サービス分野」

米州では、金融サービス分野のM&Aがディールをリードし、ディール全体の30%を占めました。技術・メディア・通信(TMT)分野のM&Aが21%と2番目に多く、次いで製薬・医療・バイオテクノロジー(PMB)分野が14%となっています。

 

ディールは米国が中心で、他の国はそれに比べて低調でした。ディール全体の90%以上を占めているのは、米国の4つの地域です。米国では金融サービスから工業・化学(I&C)まで、いくつかの主要セクターで活発な動きが見られており、特に米国北東部での動きが顕著です。

 

とくにニューヨークを擁する北東部は米州全体のディールの約3分の1を占めており、米国西部ではTMT分野の取引が盛んです。

ディールメーカーが直面する問題に、多くの共通点

現在、北米のディールメーカーの多くは「自社および業界全体におけるM&Aプロセスのデジタル成熟度と技術的洗練度は中程度である」と評価しており、2025年までにこれが高いレベルになると予想しています。

 

とくに米国とカナダのディールメーカーの間では、デジタル成熟度が高まっています。実際、米国のディールメーカーは「自社および業界全体におけるM&Aプロセスの成熟度や洗練度がすでに高い」と答えた割合が、世界の大多数の国よりも高くなっています。

 

このような違いがあるのは当然ですが、ディールメーカーが直面している問題の多くに共通点が見受けられます。たとえば北米のディールメーカーのほとんどは、M&Aプロセスに関連するデジタルテクノロジー導入の際の主な障壁として、資金面での制約、データのセキュリティーやプライバシーの問題、優れた人材や専門知識にアクセスできるかどうか、などを挙げています。これらは、世界中で課題とされているのです。

デリジェンスが1ヵ月以内に短縮されるとの予想も

北米のディールメーカーは、「今後5年間で、ビッグデータ、AIや機械学習、ブロックチェーンなどのテクノロジーがM&Aプロセスに最も大きな変革をもたらす可能性がある」と考えています。

 

たとえば、米国とカナダのディールメーカーは同様に、最も時間のかかるフェーズであるデューデリジェンス(適性評価手続き)は、「新しいテクノロジーとデジタル化によって著しく強化される可能性」があると考えています。

 

現在、米州のほとんどのディールメーカーが、「成功するディールのデューデリジェンスは平均して約1〜3ヵ月かかる」と考えています。また、ディールメーカーの75%以上は「今後5年間でテクノロジーによって分析能力が向上し、デリジェンスプロセスのセキュリティーが強化されることで、デリジェンスが1ヵ月以内に短縮される」と予想しています。

 

そして、デューデリジェンスのスピードをさらに向上させ、データの管理や通信、アナリティクス、シナリオ分析などの分野を改善するため、特に仮想データ室の一部としてのAIや機械学習に大きな期待を寄せています。

 

※ 米州およびその他の地域におけるM&AのディールドライバーとM&Aプロセスのデジタル成熟度については、Datasiteのディールドライバー(「Deal Drivers: Americas HY 2021」)とM&Aの新たな状況のレポート(「The New State of M&A: 2020-2025」)をご覧ください。

 

 

清水 洋一郎
Datasite 日本責任者

 

 

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