高水準の中国貿易統計に見る弱み (※写真はイメージです/PIXTA)

中国で月前半に公表された経済データのうち貿易統計と物価指標に注目すると、新型コロナウイルス後、中国経済をけん引してきた輸出に7月は減速感が見られました。また、輸入の伸びも鈍化し始めています。一方、中国の物価動向に目を転じると、資源価格を反映して卸売物価指数(PPI)は高水準での推移となっていますが、消費者物価指数(CPI)は落ち着いています。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報・ヘッドラインを転載したものです。

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中国経済統計:高水準の貿易統計は続くも勢いは低下、一方、卸売り物価は高止まり

中国税関総署が2021年8月7日に発表した21年7月の貿易統計(ドル建て)によると、輸出は前年同月比19.3%増と、6月の32%を大幅に下回りました(図表1参照)。7月の輸入は28.1%増で、6月の36.7%増を下回りました。

 

月次、期間:2016年7月~2021年7月、前年同月比 出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表1]中国の貿易統計(輸出と輸入、ドル建)の推移 月次、期間:2016年7月~2021年7月、前年同月比
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

中国国家統計局が9日に発表した7月の卸売物価指数(PPI)は前年比9.0%と、6月の8.8%を上回り高水準が続いています(図表2参照)。一方、中国の7月の消費者物価指数(CPI)は前年比1.0%と、6月の1.1%とほぼ同水準でした。

 

 月次、期間:2011年7月~2021年7月 出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表2]中国CPIとPPI(前年同月比)の推移月次、期間:2011年7月~2021年7月
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

どこに注目すべきか:中国輸出、19年ベース、数量ベース、PPI

中国で月前半に公表された経済データのうち、貿易統計と物価指標に注目すると、新型コロナウイルス後、中国経済をけん引してきた輸出に7月は減速感が見られました。また、輸入の伸びも鈍化し始めています。一方、中国の物価動向に目を転じると、資源価格を反映してPPIは高水準での推移となっていますが、CPIは落ち着いています。

 

まず、中国の輸出は、世界的にワクチン接種が進んだことなどを受けた景気回復を反映して高水準の伸びとなっています。しかし、足元まで見られた特需ともいえる伸びの今後については回復期待が明らかに後退しています。

 

例えば、輸出品目のうち、マスクなどを含む織物は前年同月比で27%落ち込み、4ヵ月連続のマイナスとなっています。リモートワーク関連用品も同様な傾向です。また、新型コロナの影響を除くため19年の輸出と比較して年率化した19年ベースの伸び率は7月が12.9%増で、6月の同15.1%を下回り、減速感が見られます。中国の輸出にも正常化の動きがあらわれています。

 

中国の輸入も前年からの伸び率は7月が28.1%と、6月の36.7%を下回ったものの、依然高水準です。これは高い需要を反映している場合もあります。しかし、中国の輸入の場合、気になるのは内容です。銅や鉄鉱石など資源価格の上昇が輸入金額を押し上げた可能性があります。そこで中国の輸入数量を鉄鉱石について見ると前年比で2割以上減っています。原油や銅(4割減)も減っています。例外は石炭などに限られます。

 

もっとも、中国当局も一部原材料の在庫放出など対策を打っていますが効果は未知数です。むしろ気になるのは「価格」への影響で、原材料価格を反映するPPIは急上昇しています(図表2参照)。ただ、消費者がインフレ率上昇を実感するCPIは影響力の大きい豚肉価格の下落で落ち着いています。

 

中国のPPIとCPIは11年から15年頃のように、連動する時期もありますが、足元と16~17年の頃の2局面では両者の推移に違いが見られます。16~17年の頃はそれ以前の原油価格上昇の影響と1ドル=約7元に迫った人民元安の進行がPPIを押し上げたものと見られます。流行の言葉で表現するなら「一過性」の物価上昇であったと見られ、ピークをつけた後は下落傾向に転じました。

 

足元のPPIの今後の展開を占うと、市場予想ではPPIは来年2%台に低下すると見込んでいます。今回も一過性の上昇との見方が優勢なようです。恐らく、PPIは低下し、CPIと共に来年は2%前後で推移するのがメインシナリオと見ています。

 

しかし、PPIが高止まりする一方でCPIが低水準のままであれば価格転嫁が進まない分は企業などのコスト負担になることが懸念されます。一方、価格転嫁が進みCPIベースのインフレ率が上昇となることも避けたいところです。輸出、ひいては投資の伸びが頭打ちとなる中、消費主導の景気回復にシフトする必要がある中国にとって高過ぎるインフレ率は消費を抑制する懸念があるからです。中国における水面下の政治の季節において、中国当局にとっては気になる問題なのかもしれません。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『高水準の中国貿易統計に見る弱み』を参照)。

 

(2021年8月11日)

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社

運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

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ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト 

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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