米雇用統計に関する今後の注目ポイント (※写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「市川レポート」を転載したものです。

 

●7月の非農業部門就業者数は予想を上回る伸びで失業率も大幅低下、雇用の回復は継続中。

●アトランタ連銀のボスティック総裁やウォラー理事の発言により、次回以降の雇用統計はさらに注目。

●テーパリングの早晩開始は織り込み済み、雇用回復での金融政策正常化は株式市場に好材料。

7月の非農業部門就業者数は予想を上回る伸びで失業率も大幅低下、雇用の回復は継続中

8月6日に発表された7月の米雇用統計では、非農業部門就業者数が前月から94万3,000人増え、市場予想の87万人増を上回りました。また、6月の85万人増、5月の58万3,000人増は、それぞれ93万8,000人増、61万4,000人増に上方修正されました。7月の失業率については5.4%と、6月の5.9%から大幅に低下し、雇用の回復が続いていることが確認されました。

 

7月の非農業部門就業者数の内訳を見ると、民間部門が70万3,000人増、公的部門が24万人増となっています。民間部門のうち、余暇娯楽が38万人増と、全体をけん引する格好になっていますが、これは米経済活動再開による復職の動きと推測されます。一方、公的部門の雇用増については、季節調整による教職員の雇用増が主因とみられるため、やや注意が必要です。

アトランタ連銀のボスティック総裁やウォラー理事の発言により、次回以降の雇用統計はさらに注目

非農業部門の就業者総数の推移をみると、まだコロナ・ショック前の水準を回復しておらず(図表1)、労働市場の改善を見極めるには、8月分以降の雇用統計を待つ必要があると思われます。なお、最近の米金融当局の発言も、雇用に関するものが目立ちます。アトランタ地区連銀のボスティック総裁は8月9日、力強い雇用増が1、2ヵ月続けば、10-12月中に量的緩和の縮小(テーパリング)を開始できるとの見方を示しました。

 

(注)データは2003年1月から2021年7月。就業者総数は季節調整済み。 (出所)Bloombergのデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成
[図表1]米非農業部門就業者総数の推移 (注)データは2003年1月から2021年7月。就業者総数は季節調整済み。
(出所)Bloombergのデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成

 

また、米連邦準備制度理事会(FRB)のウォラー理事は8月2日、向こう2回分(7月分と8月分)の雇用統計で、雇用者数がそれぞれ80万から100万人増加すれば、FRBは10月までにテーパリングに着手する可能性があると述べました。ボスティック総裁も、ウォラー理事も、今年の米連邦公開市場委員会(FOMC)で投票権を保有しており、次回以降の雇用統計がこれまで以上に注目されます。

テーパリングの早晩開始は織り込み済み、雇用回復での金融政策正常化は株式市場に好材料

ただ、ブレイナード理事は7月30日、9月分の経済データが出そろえば、最大雇用の目標に向けた進展を評価しやすくなると述べ、パウエル議長は7月28日、現時点で完全雇用には達していないとの見解を示しており、早期のテーパリング開始の判断にはやや慎重な様子がうかがえます。今後の雇用統計を経て、ハト派とされるこの2名の発言に、変化が生じるか否かも注目ポイントです。

 

年末までの雇用統計やFOMCなどのスケジュールは図表2の通りです。テーパリングについて、弊社は今年12月に、来年1月からの実施を決定すると予想していますが、雇用の回復が続けば、1ヵ月前倒しとなることも十分想定されます。ただ、テーパリングが早晩開始されることは市場に織り込み済みと思われ、雇用の回復を背景とする金融政策の正常化は、株式市場にとっては好材料と考えます。

 

(出所)各種資料を基に三井住友DSアセットマネジメント作成
[図表2]米雇用統計やFOMCなどのスケジュール (出所)各種資料を基に三井住友DSアセットマネジメント作成

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『米雇用統計に関する今後の注目ポイント』を参照)。

 

(2021年8月10日)

 

市川 雅浩

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

チーフマーケットストラテジスト

三井住友DSアセットマネジメント株式会社 チーフマーケットストラテジスト

旧東京銀行(現、三菱UFJ銀行)で為替トレーディング業務、市場調査業務に従事した後、米系銀行で個人投資家向けに株式・債券・為替などの市場動向とグローバル経済の調査・情報発信を担当。
現在は、日米欧や新興国などの経済および金融市場の分析に携わり情報発信を行う。
著書に「為替相場の分析手法」(東洋経済新報社、2012/09)など。
CFA協会認定証券アナリスト、国際公認投資アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員。

著者紹介

投資情報グループは、運用や調査経験豊富なプロフェッショナルを擁し、経済や金融市場について運用会社ならではの情報発信を行っています。幅広い投資家に良質な情報を伝えるべく、年間で約800本の金融市場・経済レポートの発行の他、YouTube等の動画、Twitterでの情報発信を行っています。

著者紹介

連載【市川雅浩・チーフマーケットストラテジスト】マーケットレポート/三井住友DSアセットマネジメント

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