前回は、預金好きの日本人が抱える資産形成上のリスクについて説明しました。今回は、公務員の資産形成に株式投資が向かない理由について見ていきます。

資産を増やすには「お金に働いてもらうことが重要

公務員が資産を増やすうえで必須の要件は、以下の2つです。

 

1.インフレに強い

2.手間がかからない

 

この2つの要件を満たすには、「自分ではなく、お金に働いてもらう」、つまり、投資を行うしかありません。投資として代表的なものに株式・投資信託・FXがあります。

 

どれもインターネットの発達によって、いつでも、どこでも手軽に行えるようになりました。また、積極的に運用することで短期間に2倍、3倍の価値を生み出すことが可能です。つまり、インフレに強いということです。では、これらの投資が公務員に向いているといえるのかを考えてみましょう。

値動きが激しい株式で利益を上げることは至難の業

●株式投資

転職サイト@typeの調査によると、現在投資をしているビジネスパーソンのうち、45%は株式投資を行っています。資産を増やそうとする人の半数近くが実践しているのです。まさに最も人気のある投資方法といえるでしょう。

 

その一番の魅力は、資産を大きく増やせる可能性です。以前、株式投資といえば「資産家がやるもの」と思われていましたが、1987年のNTT株上場によって世間の見方が一変しました。公務員、サラリーマン問わず注目を集め、売り出し価格120万円が2カ月後には318万円の2.65倍に上昇。たとえば、1000万円分の株を購入していれば、ただ持っているだけで2カ月後に2650万円です。これを契機に株式投資が一気に市民権を得ました。

 

また、株式は預金と違って非常にインフレに強いといえます。1950年の日経平均株価は100円前後でした。それが2016年1月は2万円前後。約200倍になっています。その間の物価上昇率は約8倍です。つまり、実質25倍に値上がりしているのです。

 

ところがいいことばかりではありません。デメリットとしては、元本保証がないことがあげられます。日経平均株価を長期的視点で見れば、確実に上昇しています。しかし、個々の上場企業の値動きは、激しい上下を繰り返しています。倒産して株価がゼロになることも珍しくありません。

 

さらに致命的なのは、値動きの大きさと速さです。最近の大きな動きとしてはリーマン・ショックがありました。2007年の日経平均終値は1万5307円。それがリーマン・ショック後の2008年には8859円にまで下がりました。約42%減です。

 

バブル前後を見ると1989年は3万8915円まで上がりましたが、バブルが崩壊した1990年には2万3848円まで大暴落しました。

 

また、株式の値動きは非常にはやく、銘柄によっては秒単位で変動します。これに付いていけなくては、適切な売り時、買い時を見逃してしまいます。ただでさえ、周りから厳しい目で見られている皆さんが、勤務時間中に株価をチェックすることなどできるはずがありません。

 

しかも、株式投資で成功するには、それなりの勉強が必要です。知名度の低い中小企業でも、画期的な商品の開発が公表されれば、翌日の株価は上昇します。一方で有名な大企業でも粉飾決算などの不祥事が報道されれば、一瞬にして株価は暴落するのです。

 

このような経済情報に常にアンテナを張り巡らしておかなければ、利益を得ることができません。朝起きたら日本経済新聞を確認し、日中はスマートフォンで値動きの確認。これが株式投資で成功する人の基本的な生活パターンです。したがって株式投資は、公務員にとって適した投資方法とは決していえません。

本連載は、2016年5月27日刊行の書籍『世界一わかりやすい「公務員」の不動産投資術』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

世界一わかりやすい「公務員」の不動産投資術

世界一わかりやすい「公務員」の不動産投資術

今川 博貴

幻冬舎メディアコンサルティング

世間一般ではリストラや減給のない理想的な職業と思われがちな「公務員」。だが「分限免職」という形でのクビが存在し、10年前と比べると給与は大幅に減少しているのが現実だ。そんな窮地から彼らを救うのが「不動産投資」であ…

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