前回は、「新法借地権」と「旧法借地権」の違いについて説明しました。今回は、大学キャンパスの「都心回帰」がアパート入居率に及ぼす影響を見ていきます。

郊外キャンパスの「都心回帰」が進んでいる

厚生労働省では、毎年9月ごろに人口動態調査を発表しています。

 

その発表によると、日本全体で人口は減少傾向にあるものの、エリアによって減少の大きさに差があることがわかります。

 

不動産賃貸業は人口減少で大きく影響を受けますので、減少が少ないエリアを選定することはとても重要です。今後10年間で人口が極端に減少する地域が、東京や神奈川にも存在します。

 

人口減少は出生率の減少や高齢化によるものと、地域性によるものに分けられます。また、都心回帰はどんどん進んでおり、地方は過疎化エリアと地方中核都市に明確に分かれます。東京近郊でいうと、学生減少により都心人気は著しく、東京から1時間の八王子には隣接市町村を含めると23校もの大学がありますが(2016年現在)、いくつかの大学は都心回帰が進んでいます。主なものは次の通りです。

 

【日野市】
2014年 実践女子大学の文学部と人間社会学部、実践女子大学短期大学部の学生およそ3000人が日野キャンパスから渋谷キャンパスへ移動


【八王子市】
2015年 拓殖大学商学部と政経学部の学生およそ5000人が八王子キャンパスから文京キャンパスへ移動


2015年 大妻女子大学社会情報学部の2015年4月入学生は1~3年次を多摩キャンパスで、4年次を千代田キャンパスで過ごし、2017年4月入学生以降は全年次を千代田キャンパス履修と、段階的に多摩キャンパスから千代田キャンパスへ移動


2016年 杏林大学保健学部、総合政策学部、外国語学部の学生およそ4000人が八王子キャンパスから三鷹キャンパスへ移動

「学生需要」がなくなった場合の対策は必須

ここ数年で、日野市からおよそ3000人、八王子市からは少なくとも9000人の学生がいなくなっています。国勢調査によると、八王子市22万2524世帯中、民間賃貸住宅は65万9軒となっており、学生の3分の1が一人暮らしだと仮定すると3579人がアパートを借りていることになります。移転により学生がいなくなることを考えると、入居率が相当低下することが予想できるのです。

 

他にも中央大学法学部が多摩キャンパスから後楽園キャンパスへの移転を発表し、2022年にはおよそ5500人もの学生が転出することになります。

 

例に挙げた八王子市、日野市は大学が合わせて23校あるため、非常に大きなマーケットですが、このような例は他のエリアにも存在します。

 

大学生向けアパートは、賃貸経営の長いスパンの中で移転によるニーズ減少がありえるため、たとえ学生需要がなくなっても入居を見込めるように対応することが必要です。

本連載は、2016年5月31日刊行の書籍『不動産投資は「土地値物件」ではじめなさい』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

不動産投資は「土地値物件」で はじめなさい

不動産投資は「土地値物件」で はじめなさい

菅谷 太一

幻冬舎メディアコンサルティング

「区分マンションは初期投資が少ない=ローリスク」 「都心の新築物件は空室率が低い=ローリスク」 そう思い込んでいませんか? 不動産投資成功の必須条件はきちんとした投資目線を持つことです。 本書では“儲かる”物件…

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