事前にサイトで物件の目星をつけている客が多数派に
20年ほど前までは、物件を借りるとき、まずは駅前の不動産会社に訪問し、不動産会社の紹介を受けていくつかの部屋を見てその中から気に入った部屋の契約をするのが主流でした。そのため不動産会社は、駅近の家賃の高い路面店(いわゆる1階店舗)に出店して顧客を確保していました。
不動産会社の紹介を受けて内見するスタイルは現在も変わっていませんが、路面店に訪問する入居希望者は減少し、ポータルサイトで価格や条件を検索した上でお目当ての部屋を見つけ、物件掲載をしている賃貸仲介会社に問い合わせ、部屋の契約をすることが多くなっています。
渋谷で賃貸仲介をしているある会社は、10年前は1日60人の来店者がありましたが、今ではポータルサイトを見ることなく訪問する人は10分の1以下になってしまったとのことです。
また、特に23区内の新宿駅、渋谷駅、池袋駅などのターミナル駅では景観上立て看板が禁止されているため、通りすがりの人を呼び込むことも難しいのです。そのため、賃貸仲介会社はよりいっそうインターネットを活用するようになりました。インターネットを前提とするため、ほとんどが路面店ではなく2階以上で営業しています。
サイトへの掲載がないと、1年以上空室になることも
つまり賃貸仲介会社は、今やインターネット掲載による反響から入居申し込みを獲得しているのです。さらに、インターネットを見て来店した人に対して、腕の良い仲介会社の営業マンは「サイトには掲載されていないのですが、もっと良い条件のお部屋があるので内見しませんか?」と提案することで自社の収益性が多い物件を案内し、契約をとりつけています。
賃貸仲介会社への反響数はサイトへの掲載件数で決まるため、毎月莫大な広告費がかかります。また、仲介営業マンの多くは歩合給です。そのため、より収益性が高い物件を紹介するのです。
このような状況において、アパートやマンションのオーナーは、より多くの情報サイトに自分の物件が掲載されることこそが空室対策となります。この対策がされていない部屋は半年、1年以上経っても入居がつかないのです。当社は、空室を出さないために以下のような工夫をしています。
●レインズ等のサイトで空室相場家賃を確認する
●空室相場家賃から家賃を想定する
●家賃、敷金、礼金、広告料、フリーレント、初期費用などの条件をオーナーと打ち合わせし条件決定する
●エリアの仲介会社へ周知訪問し、マイソク(物件の概要や地図をまとめた資料)を配布する
●提携仲介会社へメール配信し、各種ポータルサイトへの掲載を進める
自社店舗を持たない当社は、逆に仲介店舗を持ち、仲介してくれる他業者に頼った入居付けという手法での営業を行っています。
自社店舗がない分、仲介手数料、広告費などはすべて、当社の収益ではなく入居を決めてくれた仲介会社に支払いをすることになります。そのため、当社と仲介会社で利益が相反することがなく、幅広く客付けができるのです。
また、社員全員で空室の状況を共有し、2週間サイクルで条件変更の検討を行っています。何故2週間サイクルかというと、エリアの中で空室が埋まっていくと部屋数が少なくなり、家賃や初期費用などといった条件を下げずとも反響が増えたり、逆に条件が外れていた場合、入居条件を再考することで相場家賃とのズレを修正できるからです。
不動産情報が共有されるレインズには必ず物件掲載を
次に、レインズについて解説します。
レインズとは、Real Estate Information Network Systemの略で、不動産物件情報交換のためのコンピュータ・ネットワーク・システムです。旧建設省(現国土交通省)が企画し、不動産情報の標準化、共有化を目的に1990年に作られました。
賃貸物件については、レインズは不動産会社のみがIDやパスワードを使用することができ、「どの不動産会社」の「どの物件」が空室で、「どんな条件なのか」を閲覧できる唯一のシステムです。
賃貸仲介の場合、大手企業などが専用ホームページを活用して自社のみの客付けをしている場合以外は、レインズ情報を参照して問い合わせします。そのため、レインズには必ず掲載してもらうよう不動産会社に依頼しましょう。賃貸において、レインズはそれほど重要な役割を果たしているのです。