※画像はイメージです/PIXTA

散々親に迷惑をかけてきた長男。遺言には、遺産の取り分が妹よりもかなり少なく記されており激高します。「争族」となった兄妹ですが…。※本記事は、一般社団法人相続終活専門協会の書籍 『プロが教える 相続でモメないための本』(アスコム)より一部を抜粋したものです。

散財癖の兄から、連日の罵倒で妹はノイローゼに…

「お兄ちゃんはお母さんからもう十分にお金をもらっているでしょ」

 

小百合も一歩も引かない。

 

「金なんかもらってねぇよ。ちょっと借りたけど、ちゃんと返したし」

 

「嘘つかないでよ。最初のうちは月1万円くらい返してたけど、そのうち払わなくなったってお母さんに聞いてるんだから。だいたい月1万円って何? そんなんで返せる金額じゃないでしょ。最初から返すつもりがなかったってことでしょ」

 

「うるせぇな。お前こそ母さんと同居してたんだから、俺よりよっぽど世話してもらってるじゃねえか。金だってお前の方がもらってるだろ。俺は遺産の話をしてるんだよ。あんな遺言、絶対認めないからな」

 

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「500万円渡すって書いてあるんだから、それで十分でしょ。何なら出るところへ出れば良いでしょ」

 

兄妹の「争族」は、エキサイトする一方。もはや話し合いの体をなしていなかった。

 

■兄から連日罵倒されて妹はすっかりノイローゼに

 

このご家族のお父さまは神奈川県内に多くの不動産を持つ地主でした。お父さまが亡くなった一次相続の際、アパート2棟、駐車場数ヵ所の不動産は、すべてお母さまが引き継ぎました。

 

このとき、義弘さんと小百合さんは、それぞれ1000万円の現金を受け取りました。義弘さんはこのお金も散財してしまったわけですが……。今回、お母さまが亡くなったことによる二次相続では、それ以上の財産を受け取れるはずだと勝手に思い込んでいたのです。

 

お母さまは、義弘さんの性格をよく分かっていました。したがって、自分が亡くなった後、きっと遺産相続でもめるに違いないと考え、公正証書遺言を作成されたのです。

 

彼女の遺言には、義弘さんには現預金500万円のみを遺し、ほかの主だった財産であるアパートや現預金、そして自宅などはすべて小百合さんに相続させるという内容でした。しかも、遺言執行者には小百合さんが指名されていたのです。

 

遺言執行者とは、遺言の内容を実行するために必要なすべての作業(相続財産目録の作成や不動産の名義変更、そして銀行などでの預金解約手続きなど)を行う権限が与えられています。

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プロが教える 相続でモメないための本

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江幡 吉昭

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