「正式な遺言」を堂々と無視する長男…収入格差の怨恨
【登場人物】(年齢は相続発生時、被相続人とは亡くなった人)
■被相続人
母:清子(92歳、東京都在住)
■相続人
長男:一樹(70歳、別荘地に居住、元サラリーマン、現在は年金受給者)
次男:淳次(66歳、神奈川県在住、元エリートサラリーマン)
次男の妻:由紀子(62歳、専業主婦)
■遺産
都内の自宅(約4000万円)、現預金約2500万円
※別荘(約1200万円)は父死亡時に長男が相続済み
■母の遺言に納得のいかない長男が激高
「そんなのおかしいだろ! お前の方が裕福なのに、なんで俺より相続分が多いんだよ」
長男の一樹は母親の遺言に目を通すなり、いきり立った。
「これは法的にも有効な遺言なんだから、そんな言いがかりをつけても仕方ないだろ」
次男の淳次は一樹をなだめにかかる。しかし一樹の怒りはおさまらなかった。
「だいたいお前は東京の大学を出してもらって仕送りまでしてもらったろ。その学費と仕送りだけでいくらかかったと思ってるんだ。年間200万円にしても800万円じゃ済まないだろ。俺は高卒で就職したんだよ。一銭ももらわず苦労したんだよ。それなのに、なんで遺産までお前の方が多いんだよ、これで納得しろったってできるわけないだろ」
さっきから同じ話を壊れたレコードのように繰り返す一樹。げんなりした淳次は突き放すように答える。
「まだその話を蒸し返すか? その件は父さんの相続の時にカタがついたはずだろ」
「ちょっと二人とも冷静に。ここで言い合っても解決するわけじゃないし……」
ここで淳次の妻の由紀子が仲裁に入るが、一樹の激高は止まらない。
「あんたは口挟まないでくれるか。これは俺たちの問題なんだ。何様のつもりだ?」
妻に向かって怒鳴られては、淳次も黙っていない。
「いや、そもそも話し合いになっていないだろ。兄さんだって別荘を相続したくせに、自分だけ損したような言い方はよしてくれないかな?」
「あんなボロ別荘、もう価値はゼロだよ。じゃあ別荘はお前にくれてやるから、母さんの遺産は放棄しろよ」
「本気で言ってんのか? めちゃくちゃだな」