これからの投資生活を夢見た女性。再度電話をしたら
(いい買い物をしたな。これからが楽しみね)そう思いながら、指定された電話番号を鳴らしました。しかし、待てども待てども電話はつながらず、それ以降Aからの連絡もありませんでした。
ようやく私は(騙されたの?)と気づきました。警察に相談したほうがよいのでしょうか…。
2 振込詐欺の増加
ご存知じのように、日本では高齢者を狙った詐欺被害が急増しています。話題になった当初は、息子を装って「オレだよオレ」という台詞を伝えるところから始まるため「オレオレ詐欺」との名前が一般的でしたね。
「会社でとんでもないミスをした。賠償額は数百万円って言われた。お母さん助けて…」と伝えてお金を振り込ませたり、「車で事故起こしちゃった。オレも怪我が酷くて…」と心配させて入金させたり、とにかくお金せびるこの手法は「振込詐欺」と呼ばれるようになりました。
ちなみにその後、警察が名前を公募し「母さん助けて詐欺」との名称を付けましたが、定着せず失敗に終わっています(単純に「特殊詐欺」が一番しっくりくると思いますが…)。
名称についてはとりあえず置いておきましょう。本記事では一連の事件を「振込詐欺」と呼び、こういった詐欺被害(刑法246条)について解説します。
3 振込詐欺の実態
振込詐欺の特殊性は、どんどん手法が巧妙になっている点にあります。振込詐欺をするために、わざわざ実際に法人を設立して、実働部隊には定額+成功報酬の「給与」を設定している詐欺グループも存在しています。
この実働部隊には、電話をして被害者を騙す「かけ子」、現金を被害者から直接受け取る場合は、待ち合わせ場所まで赴きお金をもらう「受け子」、騙し取ったお金を口座から引き出しに行く「出し子」などがあります。「受け子」より「かけ子」のほうが地位が上のようです。
ちなみに「かけ子」の使う携帯電話は、足がつかない、つまり名義などから身元が判明しないように自分で契約していない端末を使います。これは「とばしの携帯」などと呼ばれています。
各々のグループで、かなり整った詐欺手法のマニュアルが用意されています。出し子は1回報酬1万円といった料金で引き受けているようです。巨大組織による事件の場合は、たくさんの人が被害に遭っており、被害総額10億円以上というケースもざらです。