前回は、不動産投資の最終的な売却益を左右する「銀行融資」の活用について説明しました。今回は、不動産の初期投資を回収するまでの期間を計算する方法を見ていきましょう。

不動産売却時に「損」を出しては意味がない

ある程度運用していくと、売却するか長期で保有するかの選択を検討する時期が来ます。保有していると大小さまざまな修繕、入居者トラブルなどが発生しますし、その中でキャッシュフローを求めるのか、それとも売却するのかを検討するタイミングがあるのです。それは物件の構造、築年数によって非常に大きく変化します。

 

まず、当然ですが売却損が出てしまっては利益を得る目的を達成できません。いつ投資額を回収できるかをみてみましょう。

 

まず、取得にかかる経費としては、

 

●加入する火災保険料

司法書士費用

融資手数料

不動産会社に支払う仲介手数料

購入後半年程度で来る不動産取得税

 

が挙げられます。これらを合計すると、物件価格のおよそ10%となります。

 

さらに保有中には、1年に1度、固定資産税が物件評価額の1.4%かかります。また、売却する際には、不動産会社に仲介手数料を3%+抵当権解除費用(数万円程度)がありますので、購入してから売却までの経費を考えておく必要があります。

初期投資の回収にはかなりの年数が必要!?

5000万円で購入し、固定資産税評価が土地3000万円、建物1000万円であったものを5年保有したのち売却する場合は、

 

(5000万円×10%)+(3000万円×1.4%÷6×5年)+(1000万円×1.4%×5年)+(5000万円×3%)=500万円+35万円+70万円+150万円=755万0000円

 

の経費がかかっていることになり、この額は5年間の家賃で回収し、売却益を出さなければなりません。

 

ローン残+755万円≧(500万円×入居率×運営費×5年)+売却金額とならなければ利益は出ません。

 

入居率90%、運営費15%、金利3.3%、25年ローンを組んでいたとしましょう。

 

60カ月時は元本返済金額が700万948円、元本残額4299万9052円となりますので、5000万円で購入し売却した際、755万円の経費がかかり、ローン残債が4299万円ある場合は完全な赤字となります。

 

また、これに追加して、退去に伴う修繕、入居経費(広告費など)、家賃の下落、支払金利がかかります。家賃収入から支払金利、経費などを除外し、755万円もの初期投資を回収しなければならないとなるとかなりの年数がかかりますので、現在のように購入利回りが低下している時期では長期にわたって物件を保有するという手法でなければ運用は厳しいことがわかります。

本連載は、2016年5月31日刊行の書籍『不動産投資は「土地値物件」ではじめなさい』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

不動産投資は「土地値物件」で はじめなさい

不動産投資は「土地値物件」で はじめなさい

菅谷 太一

幻冬舎メディアコンサルティング

「区分マンションは初期投資が少ない=ローリスク」 「都心の新築物件は空室率が低い=ローリスク」 そう思い込んでいませんか? 不動産投資成功の必須条件はきちんとした投資目線を持つことです。 本書では“儲かる”物件…

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