景気の先行き懸念強まる
日経平均株価は前月比▲5.2%
■7月の日本株式市場は、新型コロナウイルスのデルタ型の感染拡大を受けて新規感染者数が増加し、景気の先行きへの懸念が強まったことなどから下落しました。日経平均株価が前月比▲5.2%、TOPIXが同▲2.2%でした。
好材料に鈍感な日本株式市場
好業績、ワクチン接種の進捗は好材料
■7月下旬以降、3月期決算企業の4-6月期の業績発表が本格化しています。報道等によれば、経常利益(除く金融)は前年同期比で3倍近い増益になっているもようです。事前予想を上回る企業が多く、また、通期予想も上方修正傾向を強めているもようです。一方、ワクチン接種は16歳以上の人口比で40%を超えるなど高まっています。
■このように7月は、好調な業績にワクチン接種の進捗など、好材料があったにも関わらず、株価の下落基調に歯止めをかけることができませんでした。
落ち着きを取り戻し、じり高を予想
■日本株式市場の調整には幾つかの理由が考えられます。1点目は、デルタ型の感染が世界的な規模に広がりを見せ始めている点です。ワクチン接種が進捗している欧米や、感染が落ち着いていた中国の他、日本にとっては生産拠点として重要なアジアへのデルタ型の拡大が懸念されます。中国を含むアジアはサプライチェーンの要であり、回復途上にある輸出型企業の業績見通しに影響を与えかねません。第2に、リスクマネーが米国に回帰する傾向を強めている点です。米国株式市場は好調ですが、景気に対する期待がやや後退する中、金融緩和政策が当面続くとの安心感から、長期金利が低下し、グロース株が上昇しています。一種の安全資産として位置づけられる「グロース株」への回帰は、相対的にバリュー株の多い日本株にとってはプラスの要因とは言えません。
■当面は、デルタ型の世界的な影響を慎重に見極める必要があります。感染が拡大しても死亡率の上昇が抑えられるなど、ワクチンの効果が再認識される、また、中国を含む世界経済の回復に対する期待が再び強まる、といった動きが確認されれば、リスクマネーは日本株式など出遅れた株式市場に再流入すると考えられます。日本では、希望者全員のワクチン接種の完了が11月頃と見込まれる上に、補正予算の具体化などの動きが期待されます。日本株式市場は内需関連株の回復も期待できることから、年末に向けてじり高の展開を予想します。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『好材料に鈍感な日本株式市場』を参照)。
(2021年8月3日)
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