前回は、購入する土地を選ぶ際の、事前の調査項目について説明しました。今回は、修繕費用の観点から見た収益物件選びのポイントをご紹介します。

修繕で思いもよらぬ高額費用が発生する可能性も

前回に引き続き、物件を見分けるポイントをお伝えします。

 

次に建物の話ですが、物件購入にあたり、本当はプロの建築士にインスペクション(建物診断)をしてもらうと安心です。しかし、コストもかかりますし、それはできないという方に向けて当社がお手伝いしていることは「今後も建物を賃貸できる状態に保つために、ここ数年でどんな修繕があるのか」を確認して報告する作業です。

 

具体的には、

 

●退去時原状回復工事の詳細

●大規模修繕の必要性

●ビルメンテナンスの実施状況

 

となります。それぞれ解説します。

 

<建物を見分けるポイント① 退去時原状回復工事>

 

以前の大家さんが、退去時にエアコン、洗面化粧台などの交換を実施していない場合は、今後の退去時にはその費用を確保しておかなければなりません。

 

また、畳のままである場合は、入居が決まりづらく、賃貸で劣勢に立たされてしまいます。「退去時の畳の表替えが入居者負担になるのではないか」という疑念を入居検討者に持たせてしまう可能性がありますので、洋室に変更することも視野にいれて費用を見積もりましょう。

 

<建物を見分けるポイント② 大規模修繕の必要性>

 

一度も屋上防水がされていないマンションは、最低でも20年に1度は防水が必要です。

 

そのため高額の費用がかかることを覚悟して購入しなければなりません。特に、「平場」という屋上の平らな面がアスファルトである場合は、下地を作ってからの施工となるため、1㎡あたり2万円から2万5000円ほどの費用がかかります。シート防水の場合でも、雨漏れが発生してしまうと補修が多額になります。

必ず発生するメンテナンス内容とその費用

<建物を見分けるポイント③ ビルメンテナンスの実施状況>

 

【受水槽について】

ポンプの修繕履歴を確認することです。ポンプが2系統か1系統かを確認し、1系統である場合は、ポンプが故障すると全戸断水になってしまうため、ポンプの追加工事が必要になります。受水槽は、容量が10㎥を超えている場合、年10万円程度の槽内清掃、水質検査を実施しなければなりません。

 

受水槽がなくても都内の高層マンションにはポンプ室があり、圧送ポンプで高層階の水圧が下がらないようにしていますので、年に1度の機能点検が必要です。これは受水槽と同程度のコストがかかります。

 

【防災設備について】

自動火災警報機、ベランダの緩降機(「オリロー」など)、その他の避難器具が付いている場合、著しく劣化していれば、売り主がどんなスパンで点検、修理していたかを確認しなければなりません。

 

メンテナンスをしていない場合は、補修コストがかかります。

 

【排水管のメンテナンス】

1階に飲食店が入っているアパートやマンションは、油が溜まるため、年に1度の排水管洗浄が必須です。テナントがなくても、生活排水の詰まりでトイレ、お風呂の逆流が起こってしまうと階下漏水など水による事故が発生し、入居者の家財にまで影響を及ぼしてしまう場合もあります。防止するには定期的なメンテナンスが必須です。

本連載は、2016年5月31日刊行の書籍『不動産投資は「土地値物件」ではじめなさい』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

不動産投資は「土地値物件」で はじめなさい

不動産投資は「土地値物件」で はじめなさい

菅谷 太一

幻冬舎メディアコンサルティング

「区分マンションは初期投資が少ない=ローリスク」 「都心の新築物件は空室率が低い=ローリスク」 そう思い込んでいませんか? 不動産投資成功の必須条件はきちんとした投資目線を持つことです。 本書では“儲かる”物件…

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