(※画像はイメージです/PIXTA)

株式投資では売却益の大きさが目を引きがちですが、本来の果実は配当にあることをご存じでしょうか? 長年にわたり、大手証券会社で富裕層に資産形成のアドバイスをしてきた、経済コラムニストの大江英樹氏が解説します。※本記事は『あなたが投資で儲からない理由』(日本経済新聞出版)より一部を抜粋・再編集したものです。

株式投資、本来の果実は「値上がり益」ではなく…

株式投資をやったことがない人は、「株式投資は日々の株価の動きを追いかけて値上がり益を狙うもの」というイメージを持ちがちだ。もちろん株式投資で得られる主な利益は値上がり益であることはその通りだが、さりとて、それだけというわけではない。株式には売買によって得られる利益である「キャピタルゲイン」に加えて、保有することで得られる「インカムゲイン」というものがある。それが配当だ。

 

株式投資を行う上で、この「配当」は決して無視することはできない。むしろ、株式投資が生み出す本来の果実はこの配当にあると言っていい。株式の配当が債券の金利と異なるのは、会社が生み出す利益の額に応じて配当金が増減するというところにある。債券はいわば借金であるから、決まった金利を支払い、期限が来れば元本を返済するわけだが、株式は出資なので、会社が解散しない限り、元本が戻ってくることはない。換金の必要性が出てくれば、誰か他の人に売却しなければならない。配当も一定ではなく、その企業の業績によって増えたり減ったりするし、場合によっては無配当になることもある。

 

それだけに、成長性があり、将来多くのキャッシュを生み出してくれる企業が株主に払ってくれる配当には大きな魅力があり、株式投資の大きな醍醐味のひとつなのだ。

日本ではなぜ「配当」が重視されなかったか?

ところが我が国においては、長い間、株式投資において配当があまり重視されてこなかった。この理由は一体どうしてなのか。

 

そもそも企業が活動によって得た利益をどうやって使うかは大雑把に言えば3つの方法がある。①新たな事業へ投資する、②株主に利益を還元する、そして③内部に貯めておく、の3つだ。配当はこのうち②の株主還元の方法である。

 

かつての高度成長期には、配当をあまり出さずに事業拡大のために投資する、つまり①の方法をとる企業が多かった。

 

今でも成長途上にある企業は、多額の利益が出ていても配当は低く抑え、そのキャッシュを新規投資に回すところも多い。その結果、事業が大きく拡大して利益がさらに増えれば株価が上がることになるので、配当が少なくても株主にとっては値上がりという大きな利益を得ることができるからだ。それならせいぜい数%の利回りの配当をもらうより、新規投資に回してもらって、さらに大きな利益をあげてもらう方が株主としてはありがたい。

 

したがって日本では、1960〜1980年代の頃は配当はあまり期待されなかったし、配当の利回りは投資のモノサシとしてあまり重視されなかった。しかも当時は預金の金利が高く、株式の配当を大きく上回っていたため、株式の配当そのものにあまり魅力がなかった。

 

しかしながら、考えてみれば株式のような不確実なものに投資をする場合は預金金利よりも高い配当利回りを要求するのは当然なのだから、これは明らかに本来の姿ではなかったと言える。

 

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