配当利回りをキーポイントとする投資戦略
配当の利回りをキーポイントとする投資戦略の一つに米国で用いられている「Dogs of the Dow(ダウの犬)」というやり方がある。これは米国の「ダウ工業株30種平均」、俗に言うニューヨークダウを構成する30銘柄の中から年末時点で単純に配当利回りの高い銘柄上位10銘柄だけを購入し、1年経った翌年末にまたその時点での新たな高利回り銘柄10銘柄に買い替えるというものだ。
たったそれだけの単純な投資方法なのだが、年によってはダウ平均をかなり上回る成績を上げることもあるようだ。この投資法のポイントは割安になっている株を買うということ、そしてその割安の目安を配当利回りに置いているという点だ。
配当利回りが高いということは、配当そのものが高いか株価が安いかのどちらかということになる。配当が高いのであれば、その企業の業績は良いわけだから、今後株価の上昇が期待できる。一方、株価が下がっていることで配当利回りが高いのであれば、下がっているものはいずれ元に戻るだろうというごく単純な発想だが、これは「リターン・リバーサル」(逆張り投資)という投資の考え方である。
もちろん株価が大きく下落したことで配当利回りが高くなっている株であれば、そのまま破綻してしまうのではないかという懸念はある。しかしながらダウ工業株30種平均に採用されているような銘柄であれば、いずれも米国を代表するような企業だから、破綻についてはそれほど大きく心配することはないだろう。
日本においても単純に配当利回りの高い株を選び、その中から業績が安定し、過去数年間の配当額が一度も前年を下回っていないかどうかといった項目でスクリーニングすれば、同様の方法で安定した高利回り銘柄を発見し、それを長期保有することで安定した収益を得ることも可能ではないだろうか。
米国では配当を主たる目的として長期に保有するにあたって、DRIP(Dividend Reinvestment Plan=配当金再投資プラン)といって、配当金を現金で受け取らず、同じ会社の株式をその配当金で購入するプランがある。配当金自体は所得となるため、税務申告の際には税金を納めなければならないが、DRIPの場合は配当金が発生した時点では課税されない。したがって普通であれば配当金を受け取る時にかかる税金はその時点ではかからず、再投資することができるので、効率的に資産を増やす方法として一般的だし、人気のある制度だ。
我が国では残念ながら同じ制度はない。株式累積投資制度や従業員持株会では、配当金を再投資できるようになってはいるものの、税引き後の金額で再投資されるため、DRIPと全く同じというわけではない。期間限定ではあるもののNISAを使って株を買えば税金はかからないが、再投資はできない、といった具合にまだまだ株式の長期投資、長期保有に対する優遇策は必ずしも十分ではないのが現状である。
こうしたメリットのある制度が我が国でも採用されるようになると、もう少し資産運用や投資の選択肢が拡がってくるのではないだろうか。投資信託だけではなく、株式の長期保有もまた大きく資産を増やすための有力な方法なのだから。
大江 英樹
株式会社オフィス・リベルタス 代表取締役
1級ファイナンシャルプランニング技能士
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