なんで友人のお腹には命が宿るんだろうか…
奇しくもちょうどその頃、仲の良い友人の「できちゃった」報告がLINEで送られてきたのもあり、私は完全に心が折れていた。
こんなに夜も早く寝るように心がけて、「温活がいい」と聞いては酵素浴やらよもぎ蒸しやらに通い、タイミングや精子採取のために、夫婦で気まずい思いをして、安くはない治療費を払っているのに、なんで、「そんなつもりじゃなかった」友人のお腹には、命が宿るんだろうか。
次の周期で、もう一度人工授精を試みることを勧められたが、私は、「いったん考えます」と、診察室を後にした。
世の中には、「今デキたら困る」と、人工妊娠中絶を迷う人がいる。「子供もういらない」と言っている人のところに、3人め4人めの命が宿る。せっかく授かった命なのに、虐待死させてしまう人もいる。
何のための不妊治療なのか、出口を見失っていた。
クリニックに通うことは、そこで一旦やめてしまった。
当然ながら、排卵は月に一度だけ。
「今月はどうなるんだろう」とそわそわしながら日々を過ごす生活を、これ以上続けたら、メンタルがおかしくなりそうだった。
タイミング療法と人工授精を、何年も続けている夫婦もいる。
不妊治療には、経済的な問題も大きく関わってくる。
でも、それ以上に「いつ終わるのかわからない不安」が大きくのしかかる。
変な話、「100万円払ったら、絶対に妊娠します」という確約は無い、ということだ。高額な治療費がかかるのに、いつ終わるのかわからない。
毎月「今月こそは」と、そわそわして過ごす。生理の経血を見るたびに、ガックリと肩と落とす。
時間の都合をつけることも、とても難しい。
「明日、また来てください」そんなことはザラだった。
「明日、午前はお休みします」「明日は一日休みがもらえますか?」
そんなふうに無理を言って仕事の都合をつけることは、容易なことでは無い。
それでも、やるしかない。
なぜなら、「明日を逃したら次はまた1ヶ月以上先」になるからだ。
厳密には、場合によっては2ヶ月以上先になってしまうこともある。
「排卵」は、月に一度しか起こらず、「その日」を逃したら、どんなに早くても1ヶ月以上先。また一から始めなければならない。
すっかり心の折れた私だが、それからしばらくして、偶然SNSで見たとある投稿をきっかけに、再び治療を開始することになる。
山下 真理子