株価急落でも慌てて「投げ売り」をしない「行動ファイナンス」の視点 (※写真はイメージです/PIXTA)

株式市場では、2020年のコロナショックのように急落する局面が数年に一度の頻度で起こる傾向があります。本記事では、ファイナンスに心理学の概念を取り入れた「行動ファイナンス」の視点から、株価急落時にどのような考え方をすれば冷静な投資判断ができ、慌てて「投げ売り」をせずに済むかを、東海東京調査センターの中村貴司シニアストラテジスト(オルタナティブ投資戦略担当)が解説します。

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「行動ファイナンス」の視点でピンチをチャンスにする

2020年の日本株式市場は、世界的に広がった新型コロナウイルスに振り回され、目まぐるしい値動きとなった。

 

日本株の代表的な指数の一つである日経平均株価は、2020年1月17日に20,411.6円の年初来高値をつけたあと、3月19日には16,635.8円まで急落。高値からほぼ2ヵ月で30%超の大幅な下げとなり、投資家を含む市場関係者は不安と恐怖に包まれたことは記憶に新しい。

 

このような状況下で、「行動ファイナンス」をどのように投資に活かせばピンチをチャンスに変えることができたかについて考えてみたい。

 

この「行動ファイナンス」とは、ファイナンスの分野に心理学の概念を取り入れた理論で、実際のマーケットにおける理論と現実のギャップを埋めるために登場した理論として知られる。

 

早速だが、「ピンチをチャンスに変える日本株投資の戦略アイデア」を紹介する。投資メンタルマネジメントの実践と自分自身に対する行動コーチングの一例として見ていきたい。

コロナショック時の自分自身との対話からヒントを探る

以下は、2020年3月のコロナショックで日経平均株価が暴落したときに、「行動ファイナンス」の視点で冷静な投資判断をしたことを想定した、自分自身(投資家自身)との対話例である。

 

「日経平均株価は新型コロナウイルスの影響を受け、2万円を割り込み、さらに急落の動きとなっている(2020年3月時点)。2018年10月以降の急落場面はそうそう来ないと思っていたので、こうした株価急落には正直驚いている。ただ、ここは一旦、冷静になりながら投資アイデアを構築する必要があるのだろう。少し客観的に考えてみたい。

 

新型コロナウイルスの影響により、先行きの景気や企業業績の大幅悪化が見込まれるかと思う。市場でもファンダメンタルズ分析、特に業績トレンドを重視するアナリストやストラテジストはまだまだ日本株は下がるとコメントし、市場では売り圧力が強まっているようだ。

 

一方、周りの投資家の様子を見ると、底値圏で現れる我も我も(われもわれも)と怖くなって売り急ぐ「ハーディング(横並び)現象」が起きている。また、テクニカルの200日移動平均乖離率やPBR(株価純資産倍率)※1など過去のデータ・経験則からみても、売られ過ぎ圏に来ている。

 

※1:資産の観点から株価が割安か割高かを見る指標。1株当たり純資産は「会社の解散価値」とも呼ばれ、現在の株価と会社の純資産を比較する。PBRが小さいほど、相対的に株価が割安であることを示す。

 

過去のデータを見ると、日経平均株価(終値ベース)であれば、概ね移動平均乖離率※2がプラス20~30%以上なら買われ過ぎ、逆にマイナス20~30%を下回れば売られ過ぎという傾向を示している。

 

※2:実際の値動きと移動平均線との乖離から投資タイミングを計るテクニカル指標の一つ。中長期が前提であれば、移動平均線は200日など長めのデータを使用する。

 

もちろん、相場にはオーバーシュートの動きもあり(行き過ぎもまた相場であり)、リーマンショック時には乖離率がマイナス40%を超えて急落した場面もある。だが、概ね経験則では、乖離率はマイナス20~30%程度で止まっており、今回がリーマンショック級の下げと違うものであれば、底値圏として機能する可能性は高いだろう。

 

さらに、バリュエーション指標のPBRから見ても底値圏に到達していると考えられる。具体的には、日経平均株価の足元のPBRは、リーマンショック時の底値圏となった0.8倍台まで低下してきており、やはり売られ過ぎ感が強いように思う。

 

日々のニュースを見ても暗い話が多く、先行き不透明感が強い状況には変わりはないが、株式市場においては逆に底値圏にあり、先行き反発する可能性がある。

 

もちろん相場に絶対はないし、もう一段下がるのでは?との不安も恐怖もある。しかしながら、総合的に考え、ここからは日本株を売却するのではなく、ポートフォリオ全体を考え、持ち切るもしくは時間分散の観点から追加で投資することも一つの選択肢になってくるだろう。」

 

■まとめ

以上見てきたように、「投資メンタルマネジメント」と「行動コーチング」は、自らを俯瞰的に見ながら冷静に問いかけ、合理的な投資判断を下していく技術と言えよう。

 

株価はその後大底を打った後、V字回復の動きとなり、2021年には3万円の大台をつけた。もちろん、今回はそのような投資判断がたまたま上手く機能しただけなのかもしれない。

 

しかし、投資家たちの「①ハーディング(横並び)」による投げ売りの動きを冷静に見ていることに加え、ファンダメンタルバリュー(割安さ)と売られ過ぎ感を示すテクニカル指標(移動平均乖離率)を「②経験則(広義のアノマリー)」として組み合わせ、市場を分析している点は、大いに参考になろう。

 

①②のような「行動ファイナンスの視点」を活かした投資スタイルと自分自身への対話をしっかりと取り入れることで、ピンチであってもチャンスに変える投資戦略アイデアにつなげたい。

 

中村 貴司

東海東京調査センター

投資戦略部 シニアストラテジスト(オルタナティブ投資戦略担当)

 

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東海東京調査センター
投資戦略部 シニアストラテジスト(オルタナティブ投資戦略担当)

山一證券、メリルリンチ日本証券、損保ジャパンアセット(現SOMPOアセット)などでの富裕層・法人営業に加え、年金基金、投資信託のアナリストやファンドマネージャーとして新興市場やオルタナティブを含む幅広い市場・商品の担当責任者を経て、2016年に東海東京調査センター入社。

現職では短中期の戦術的資産配分(タクティカル・アセットアロケーション)やオルタナティブ投資(ヘッジファンド・テクニカルやコモディティ戦略含む)の視点を踏まえたグローバルな日本株の市場分析等を行う。他の代替資産・戦略としてJリート投資戦略、ESG投資戦略、行動ファイナンス投資戦略などもカバーしている。

英国国立ウェールズ大学経営大学院MBA。アライアント国際大学・カリフォルニア臨床心理大学院米国臨床心理学修士号(MA)。慶應義塾大学商学部卒。国際公認投資アナリスト(CIIA)、日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)、国際テクニカルアナリスト連盟検定テクニカルアナリスト(MFTA)、CFP、英国王立勅許鑑定士(MRICS)、不動産証券化協会認定マスター、中小企業診断士。

日経CNBCなどのTV・メディアに出演。日経新聞、QUICK、ロイター、ブルームバーグ、時事通信、東洋経済オンライン、幻冬舎ゴールドオンラインなどでも執筆、コメントを行う。ヘッジファンド・テクニカルのキャリアとして世界のテクニカルアナリスト協会を束ねる国際テクニカルアナリスト連盟(IFTA)の理事などを歴任。早稲田大学ビジネスファイナンスセンターや同志社大学、青山学院大学等で講師を務める。

著書には投信営業に行動ファイナンスアプローチなどを活用した『会話で学ぶ!プロフェッショナルを目指す人の「投信営業」の教科書』(2021年)がある。

●オルタナティブ投資戦略(東海東京TV)
https://www.tokaitokyo.co.jp/tv/public/market/global.html

著者紹介

連載「行動ファイナンス」の視点を日本株投資に活かす方法

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