●日経平均は75日移動平均線が上値抵抗線となり、2月以降は戻り高値が毎月切り下がる状況。
●下落リスクはあるが日経平均は長期上昇トレンド形成中で27,000円台程度なら調整の範囲内。
●30,000円の回復には主要国の経済正常化や米金融政策の正常化が波乱なく進むことが必要。
日経平均は75日移動平均線が上値抵抗線となり、2月以降は戻り高値が毎月切り下がる状況
今月の日経平均株価は、15日に一時29,480円85銭の月間高値(取引時間中、以下同じ)をつけましたが、15日、16日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)がタカ派的な内容だったことなどから、米国の早期利上げ懸念が強まり、日経平均株価は21日、27,795円86銭の月間安値をつけました。その後、すぐに値を戻したものの、29,000円台では上値の重い展開が続いています。
日経平均株価の75日移動平均線をみると、4月下旬以降、比較的強い上値抵抗線として作用しており(図表1)、これが29,000円台の定着を阻害する1つの要因になっていると思われます。また、年初からの戻り高値は、30,714円52銭(2月16日)、30,485円00銭(3月18日)、30,208円89銭(4月6日)、29,685円41銭(5月10日)、29,480円85銭(6月15日)と、水準が毎月切り下がってきています。
下落リスクはあるが日経平均は長期上昇トレンド形成中で27,000円台程度なら調整の範囲内
これらの点を踏まえると、日経平均株価が30,000円を回復するには、まず75日移動平均線をしっかりと上抜け、少なくとも6月と5月の戻り高値を順に超えていく必要があることが分かります。ただ、市場は現在、米国の物価動向や米金融政策の正常化ペースを慎重に見極める時間帯に入っており、日経平均株価が直ちに30,000円を回復することは、やや難しいように思われます。
一般に、上値の重い展開が長く続けば、反落のリスクは次第に大きくなります。しかしながら、6月9日付レポート『日経平均株価の長期トレンドを確認する』でお伝えした通り、日経平均株価は長期上昇トレンドを形成中です。そのため、日経平均株価がこの先、5月や6月にみられたように、再び27,000円台へ下落しても、調整の範囲内と考えることができます。
30,000円の回復には主要国の経済正常化や米金融政策の正常化が波乱なく進むことが必要
ここで、日経平均株価が、75日移動平均線を上抜け、戻り高値を順次回復し、30,000円に向かうための材料を整理しておきます。まずは、主要国でワクチンの接種が一段と普及し、感染の再拡大が抑制されるなか、「経済活動の正常化」が順調に進展することです。そして、米国については、インフレが一時的にとどまり、労働市場の緩やかな改善が続くなか、「金融政策の正常化」が市場の波乱なく進むことです。
これらが実現する過程や、実現の期待が形成される段階において、日経平均株価は上昇基調を強めることが予想されます。この時、国内企業の業績についても、一段の改善が見込まれるため、リビジョン・インデックス(図表2)の更なる上昇(アナリストが業績予想を上方修正した銘柄の比率が上昇)など、金融相場から業績相場への移行を示唆する動きが顕著にみられるようになると考えます。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『日経平均株価の戻り高値と突破のための支援材料』を参照)。
(2021年6月29日)
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト