(※写真はイメージです/PIXTA)

暗号資産の利益は、原則として税率の高い「雑所得」に区分されるため、「売りたいけど税金を払うのは…」といった事態に陥りがちです。そこで本記事では、株式会社アレース・ファミリーオフィス代表取締役、一般社団法人相続終活専門協会代表理事の江幡吉昭氏が暗号資産の税金対策について解説していきます。

暗号資産で重要になる「ふ・じ・さん・じょう」とは

3.個人から法人に譲渡するときには「富士山上」

 

個人から法人に譲渡という話を書きましたが、実際譲渡すると個人に多額の利益が生じてしまいます。そこで出てくるのが「ふ・じ・さん・じょう(=富士山上)」の譲渡所得です。

 

暗号資産の所得に損益通算できるものは、原則として、「不動産所得・事業所得・山林所得・譲渡所得(総合課税の内、一定のもの)の損失」です。これらの所得の損失は、暗号資産や給与所得などほかの所得と損益通算することができるので有効活用するのです。これらの所得の頭文字を取って、「不・事・山・譲(=富士山上)」と覚えておきましょう。

 

それではまず不動産所得から説明します。この不動産所得の損はあくまで「不動産賃貸業の損」であり「譲渡損」ではない点、注意してください。たとえば「不動産賃貸業をやっていて、賃料収入より、修繕などの支出が多かったケース」が不動産所得の損となります。

 

次に、事業所得です。これは、個人事業で行う商売などです。これらの商売で損を出してしまうと事業所得の損となります。

 

第三に、山林所得です。これに関してはその名の通り、山林を伐採して譲渡したり、立木のままで譲渡したりすることで生ずる所得です。しかし暗号資産を保有されている方で、山林所得がある方は現実的にほぼいらっしゃらないのではないでしょうか。

 

最後に譲渡所得(総合課税の内、一定のもの)です。譲渡所得とは、土地、建物、株式、ゴルフ会員券、書画骨董、貴金属や宝石などの資産を売却することによって生ずる所得です。

 

この「富士山上」の譲渡所得のなかでも、分離課税(対象:土地、建物、株式など)の損失は暗号資産の利益と相殺できませんので注意してください。なお、譲渡所得のうち、総合課税に該当するものとしてゴルフ会員権がありましたが、税制改正により損益通算できなくなりました。

 

貴金属や骨とう品も1個当たり30万円超のものは、生活に通常必要でない資産として損益通算できません。30万円以下のものは、生活に通常な資産として譲渡損はなかったものとして扱われます。そのため、譲渡所得で総合課税となるものは、損益通算できるものが限られているのです。

 

暗号資産の利益を消したい方に「譲渡所得の損失であるならば、不動産の譲渡の損失と暗号資産の利益を相殺できますか?」とよく聞かれますが、不動産の譲渡の損失は分離課税のため、相殺できません。

 

4.最後に

 

本記事では、暗号資産の利益と相殺できる「富士山上」の譲渡所得について解説しましたが、暗号資産を持っている方は基本的に20代~40代以下の若い方が多く、上記の資産を持っていない方がほとんどでしょう。

 

これらの損を作って暗号資産の利益と相殺することが非常に難しいということがご理解いただけたと思います。とはいえ、このように暗号資産の利益を相殺する特殊な手法が、世の中には存在するのです。

 

 

江幡 吉昭

株式会社アレース・ファミリーオフィス 代表取締役

一般社団法人相続終活専門協会 代表理事

 

 

本連載に記載されているデータおよび各種制度の情報はいずれも執筆時点のものであり(2021年6月)、今後変更される可能性があります。あらかじめご了承ください。

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