(※写真はイメージです/PIXTA)

新型コロナウイルスのワクチン接種が進んでいます。医療従事者、高齢者以外への接種も始まっている一方、「ワクチンを打ちたくない」という人々も一定数存在します。個人の意思は尊重すべきではありますが、多くの方が接種したほうが早い収束が望めるはずです。穏当に接種率を上げるにはどのような方法が考えられるでしょうか。経済評論家の塚崎公義氏が解説します。

コロナを恐れない人には、インセンティブで再考を促す

本稿がもっとも重要だと考えているのは、「新型コロナは怖くないから、当然ワクチンは接種しないし、毎晩楽しく飲み歩いている」といった人に接種してもらうことです。

 

こうした人々は、副反応を恐れている人よりもはるかに危険です。副反応を恐れるような人は、新型コロナも恐れているでしょうから行動も慎重でしょうが、新型コロナを恐れない人は行動が積極的でしょうから。

 

一方で、こうした人々ならば、副反応を恐れている人とは異なり、適切なインセンティブを考えれば接種してもらえるように誘導できるでしょう。

 

接種を無料にしたことで、ある程度は接種が進むと思います。「金まで払って接種するのは嫌だが、無料なら接種してもよい」という人は一定数いるでしょうから。

 

あとは、「接種した人には1万円差し上げます」といったインセンティブが考えられます。もっとも、この場合には既に進んで接種した人にも同額を支払う必要がありますね。

 

飲みに誘われた人が「予防接種済証のない人とは飲まない」といって断るというのは、自衛手段として有効かもしれませんが、それでも「昨晩、気にしない人々だけで楽しく飲んだら罹患してしまった」といった事態になり、翌日にも職場の人々を罹患させてしまうリスクは残るわけです。

 

そうだとすれば、行政が「飲食店は予防接種済証のない客には酒を提供するな」という規制をすることが考えられます。これであれば、飲食店としては一律の酒類提供禁止よりも、はるかに従いやすいでしょう。

 

あるいは規制に頼らずに、飲食店が「予防接種済証のある客には酒類を2割引」といったインセンティブを与えることも要検討でしょう。人間の心理として、予防接種済証のない客は「他の客より2割高いのは不愉快だ」と考えて入店しない人も多いでしょう。いままでより値上がりしたわけではないのに(笑)。

 

新型コロナで深刻な打撃を被った飲食店や観光地などでは、そうしたインセンティブを提供することで安全な店づくりを心がけ、それをアピールすることも要検討でしょう。

 

もちろん、そうした人が「安く飲むために、自分も接種しよう」と考えてくれるならば、その店にとってのみならず、日本全体にとって素晴らしいことですが。

「面倒を嫌う心理」を利用すれば、接種率は上がる!?

行動経済学という学問があります。その研究のひとつに「人は面倒な事が嫌いだ」というものがあります。そんなことはわざわざ研究しなくても知っていますが、学問というのはそういうものなのです(笑)。

 

「臓器提供をしてもいい人は申し出て」という国と「臓器提供が嫌な人は申し出て」という国があり、両者で提供率が大きく異なるようですが、その理由のひとつも申し出るのが面倒だからでしょう。

 

それを応用できればいいですね。「あなたのワクチン接種の予約を月曜日の10時からに設定しました。都合の悪い人や、ワクチンを打ちたく無い人は申し出て下さい」といわれると、その時間に接種する人が増えるような気もします。強制だと受け取られないよう、注意することは必要でしょうが。

 

もうひとつ、「みんなも打っていますよ」というメッセージを送るのも有効なようです。とくに日本人は他人に影響されやすいですから。場合によっては、「あなたが打つと、周りの人も打ちたくなるかも」というというメッセージも有効かもしれませんね。

 

今回は、以上です。なお、本稿は筆者の個人的見解であり、筆者の所属する組織等々の見解ではありません。また、わかりやすさを重視しているため、細部が厳密ではない場合があります。ご了承いただければ幸いです。

 

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塚崎 公義

経済評論家

 

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