不服申し立て、要介護度認定のやり直しの結果は
ばーばが、食事も排せつも着替えも全介助だったら「要介護5」の結果は納得ができる。しかし、ばーばは一人で食事はできる、それも箸を使ってだ(おかずが気に入らないと、お盆をひっくりかえすが)。
もちろん、普通に話せるし文字だって読める(気に入らないと話さないが)。車いすではあるが、手すりにつかまって立つことだってできる(気に入らないと立たないが)。入浴だって、ストレッチャー式の機械浴(寝たままの状態でお風呂に入れる機械)で入浴しているわけじゃない。
なのに、なんで!「要介護5」の利用料を支払わなくちゃならないの! に対して怒っているのだ。
ばーばは、病気(レビー小体型認知症)のせいもあるが、見知らぬ人に対しては警戒心をむき出しにし、口を利かない。おまけに、気分にムラがあり気に入らないと「帰る~、帰る~」としか話さなくなる。きっと認定調査の時もそんな風だったのだろう。
そこで、再度、普段のばーばを見てもらうために、「不服申し立て」という手段をとり、再度、要介護認定のやり直しをお願いすることにした。
毎日、母のケアをしてくださっている施設には申し訳ないが、要介護5の利用料は払いたくない。
調査の当日、何をされるのかしら? と調査員に敵対心むき出しのばーば。
「こんにちは、〇×です。この文字は読めますか?」と首から下げた名札を見せる調査員。
「読めません!」ばーばより先に私が答えた。
「お嬢様ではなく、お母様にお伺いしておりますが……」
内心、「知ってるわい」と思いながらも、
「あ! そうだったんですね。でも、文字が小さすぎて老眼の私には読めません」
この会話を聞いていたばーばは爆笑! 作戦成功。ばーばのテンションが上がってきた。
ついさっきまで一言も言葉を発しなかったが、調査員の質問に答え、手をあげて下さいと言われれば、手をあげ、言われていないのに足まで動かすサービスぶりだ。
こんな感じで、私は、調査中のばーばのテンションをあげることに注力した。おかげで、一度も「帰る~」を発せず認定調査は終了したのであった。
れから、1カ月半後郵送されてきた介護保険証には「要介護3」の文字。なんと、2段階も下がった。
調査員の前では「いいところを見せよう」と、本来はできないことも、認定調査員の前では「できます」と言い。介護度が低く出てしまうケースは良く聞くが、ばーばの場合はできるのに、なにもしなかった結果、介護度が上がってしまったという逆のケースだったのだ。
1カ月数千円の差ではあるが、何十年続くかわからない施設入居。実際にばーばは施設に入居して11年も経っている。月々数千円の差は、10年経ったら数十万円の差になるのだ。
次回の更新の際には、絶対に同席すると心に誓ったのである。
黒川 玲子
医療福祉接遇インストラクター
東京都福祉サービス評価推進機構評価者