今回は、会社存続の鍵を握る「資金繰り」について具体的な方法を見ていきます。※本連載は、後継者として運送会社の引き継ぎに成功した菅内章夫氏の著書、『できる運送会社の事業承継バイブル』(エベイユ)の中から一部を抜粋し、運送会社特有の事業承継のポイントを解説します。

銀行残高を確認して会社の資金状態を把握

筆者が実家に戻ってきたとき、資金繰りが厳しくて自分の定期預金の通帳を持って待機しましたが、資金繰りは会社にとって、もっとも重要なことです。これがうまくいかなければ、倒産ということにもなりかねません。

 

この対策として、いま筆者がやっていることは、銀行口座の残高を見るということです。事務員にまかせることもできますが、やりくりがつかなくなった段階で社長に報告されても、タイミングによっては資金繰りができなくなってしまいます。

 

会計士や中小企業診断士などの話を聞くと、3カ月先ぐらいまでの資金繰りを見ておくべきだといわれますが、売上金額の変動が激しいので、それはむずかしいというのが率直な感想です。

 

たとえば、売上金額が5000万円だとすると、その半分の2500万円が人件費になります。この売上金額が1割減で4500万円になったとします。そういうときでも、人件費の2500万円はそれほど減額にならないのです。その差額を調整して、お金が足らなくならないようにするのが資金繰りなのです。

1か月の資金繰り確認は社長の仕事にする

弊社の場合、大口の取り引きがあり、それは日計で150万円くらいになります。それが毎月、同じ稼働日数であれば問題ありませんが、その月によって稼働日数が異なるのです。それは得意先の都合によるので、こちらでは操作できません。そのため、2〜3カ月前から資金繰りを予測してやるということが難しいのです。

 

今は、会計事務所の方で、前年実績と照らし合わせて資金繰り表を作ってもらっていますが、前年同時期と同じ売り上げになるとはかぎらず、実際とは大きく異なってきます。したがって、資金繰りは重要な仕事になるので、後継者が自ら引き継ぐ必要があると思います。

 

筆者は、日計表に取引銀行の残高を記入しています。入金額、出金額共に記入できるようにし、毎月決まった出金は、項目と金額をあらかじめ記入しておきます。また、当月の入金額が判明した時には、その入金額を記入して、当月の出金予定額も記入していき、差し引きをして日々の銀行残高が、いくらになるのかを記入しています。

 

日々の銀行残高や入出金額の記入は、事務員さんに任せて、1か月の資金繰りの確認だけを社長の仕事にしていくと良いでしょう。

本連載は、2016年3月10日刊行の書籍『できる運送会社の事業承継バイブル』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

できる運送会社の 事業承継バイブル

できる運送会社の 事業承継バイブル

菅内 章夫

エベイユ

同族会社の多い中小の運送会社にとって、承継問題は人ごとではないはずです。物流業界の厳しい環境を生き抜いていくためには? 承継を考える経営者がやるべきこととは? 家業を継ぎ、久居運送の社長になって会社を立て直した著…

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