今回は、運送会社を親族に引き継ぐ際にまず検討すべき点などを見ていきましょう。※本連載は、後継者として運送会社の引き継ぎに成功した菅内章夫氏の著書、『できる運送会社の事業承継バイブル』(エベイユ)の中から一部を抜粋し、運送会社特有の事業承継のポイントを解説します。

親族に後継者が見つからない場合はM&Aも選択肢に

事業承継を考えるときに、まず後継者をだれにするかが問題となります。中小の運送会社は、同族会社が多いので、後継者は、親族の中から選ぶことがほとんどでしょう。

 

その中でやっぱり一番になるのは、息子でしょうか。親族の中に後継者が見つからない時は、社員の中から、経営に携わっている人、幹部社員の中から選択する方法があります。それ以外には、M&A(企業の合併と買収)というやり方もあります。

経営・株式・資産の3つの引継ぎが重要

親族に引き継ぐ場合には、経営者としての資質・能力があるか、資産の相続・贈与をどうするか、役員や社員の士気を維持できるかなどの問題があります。また、親族以外に引き継ぐ場合は、借入金の個人保証ができるか、自社株の買い取りができるか、役員や社員の理解が得られるかなどの問題があります。いずれにしても事業承継の時に、経営と株式と資産の3つを同時に考えないといけません。

 

社長を退き、親族に承継するときには、資産の移譲を考える必要があります。親族に社長を譲るときには、株式や土地・建物などの資産を相続、又は贈与という形で譲渡することになります。相続は、事業承継のことだけでなく、親族全体の相続問題となるので、十分に検討する必要があります。

 

もし、後継者がまだ若くて社長を譲るのが先になるようなら、一時的に第三者を社長にするということも考えられます。そのときは、株式や資産の譲渡をどうするかよく考えないといけません。経営は引き継げても、株式や資産の移譲は慎重にしないと、将来的に難しい問題に発展する可能性もあります。これらは相続問題も含めて、事業承継の専門家や会計士によく相談するのが良いと思います。

本連載は、2016年3月10日刊行の書籍『できる運送会社の事業承継バイブル』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

できる運送会社の 事業承継バイブル

できる運送会社の 事業承継バイブル

菅内 章夫

エベイユ

同族会社の多い中小の運送会社にとって、承継問題は人ごとではないはずです。物流業界の厳しい環境を生き抜いていくためには? 承継を考える経営者がやるべきこととは? 家業を継ぎ、久居運送の社長になって会社を立て直した著…

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