今回は、運送会社のソフト面での引き継ぎに「失敗談」が役立つ理由について見ていきます。※本連載は、後継者として運送会社の引き継ぎに成功した菅内章夫氏の著書、『できる運送会社の事業承継バイブル』(エベイユ)の中から一部を抜粋し、運送会社特有の事業承継のポイントを解説します。

人材の採用には従業員の意見を聞く

社長から後継者への実務的な引き継ぎは、本連載にて述べたとおりですが、ソフト面でのアドバイスとして自分の失敗談を伝えるということが有効だと思います。

 

順風満帆に見える社長でも、失敗したことがあったのだと知れば、後継者となる気負いがなくなり、自然体で会社を引き継ぐことができます。恥をさらしたくないという気持ちは抑えて、率直に伝えた方がいいと思います。

 

筆者の場合、中途採用によく失敗します。筆者に人を見る目がないのかもしれませんが、面接で印象のよかった人でも実際に入社してみると、期待はずれということが少なくないのです。

 

そんなことを繰り返しているうちに、女性の事務員の意見が的を射ていることに気づきました。女性の勘とでもいうのでしょうか。女性の事務員が「この人はよさそうだ。長続きしそうだ」という人は、そのとおりになることが多いのです。

 

そんなわけで、いまは女性の意見を参考にしています。これが後継者へのアドバイスになるかどうかわかりませんが、実際に面接だけでは人材の善し悪しがわかりにくいのです。

現場とのコミュニケーションを大事にする

また、過去に協力会社の社員が、得意先で問題を起こしたことがありました。大口の取り引きがなくなるかもしれないほどの重大な問題だったのです。幸いなことに、このときは久居運送の社員ではなく協力会社の社員だったということもあり、協力会社との関係を打ち切ることで事なきを得ました。

 

このときに得た教訓は、たとえ協力会社の社員であっても、働いてもらう以上は全員に目を行き届かせる必要があるということです。つまり情報の共有です。現場とのコミュニケーションを密にしておけば、何か不都合なことがあったとき、社長の耳に入ってきます。そういう信頼関係を構築しておくことが大切です。

 

そこで、いまは月に1回の例会に協力会社の社員も参加してもらうようにしています。そこで、社会人マナーやドライバーの心得、安全運転の徹底、交通ルールの遵守などの話をしています。ドライバーの資質のアップは、自社の社員だけでなく、協力会社の社員まで考える必要があるのです。

本連載は、2016年3月10日刊行の書籍『できる運送会社の事業承継バイブル』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

できる運送会社の 事業承継バイブル

できる運送会社の 事業承継バイブル

菅内 章夫

エベイユ

同族会社の多い中小の運送会社にとって、承継問題は人ごとではないはずです。物流業界の厳しい環境を生き抜いていくためには? 承継を考える経営者がやるべきこととは? 家業を継ぎ、久居運送の社長になって会社を立て直した著…

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