(※写真はイメージです/PIXTA)

東京オリンピック・パラリンピックが開催中だが東京都のコロナ感染者が急増しています。そもそもコロナのクラスター追跡が限界を迎えたとき、ロックダウンという手段がとられることとなります。日本には外出を規制する法律がないから、ロックダウンはできない。とよく言われますが、それは間違いだと感染症医は語ります。経済活動・社会活動への副作用はありますが最もパワフルなロックダウンを成功させるにはどうすればいいのでしょうか。※本記事は、岩田健太郎氏の著書『僕が「PCR」原理主義に反対する理由』(集英社インターナショナル、2020年12月刊)より一部を抜粋・再編集したものです。

「法律的に日本でロックダウンはできない」は間違い

ロックダウンとは何か。その地域への人の出入りを止める。その地域に住んでいる人たちは自宅にとどまる。これがロックダウンです。

 

生活必需品を買うための外出は認めるとか、医療従事者の出入りは認めるとか、細則はいろいろあります。しかし原則として「その地域に人を入れず、出さない」「その地域に住んでいる人は自宅から出ない」がロックダウンです。

 

「日本には外出を規制する法律がない。だからロックダウンはできない」

 

そんなことを言う人がいます。しかしそれは間違いです。法律上、「外出をするな」とか「店は閉めろ」といったことを強制できないのは事実ですが、それは重箱の隅をつつく議論で、本質的な問題ではありません。日本でもロックダウンはできます。

 

「この地域に入らないでください」

 

「この地域から出ないでください」

 

「この地域に住んでいる人は外出しないでください」

 

「罰則はないけれど、協力してください」

 

国がそう言い続けるのがロックダウンです。

 

法律上の罰則規定は手段の一つであって、目的ではありません。目的は感染を終息させることです。

 

感染を終息させるという目的において、ロックダウンは最もパワフルな対策です。その効果には絶大なものがあります。

ロックダウンを成功させる要件は「狭く強く短く」

しかし、むやみにやるべきではありません。経済活動や社会活動が止まってしまう、という強い副作用があるからです。

 

感染が大規模に広がっていて、沈静化の見込みがない。あるいは、感染がさらに拡大する恐れがある。そうしたケースでは、とにかく感染を沈静化させないことには経済活動ができません。経済をいったん止めなければ、経済を元に戻せないわけです。

 

社会活動についても同じことが言えます。そうした事態においては、ロックダウンの副作用は吞み込むしかありません。

 

日本は南北に長い国でして、感染のクラスターが拡大しても国全体レベルの問題にはなりにくいです。よって、ロックダウンは「名古屋だけ」とか「兵庫県だけ」とか「東京都、神奈川、埼玉、千葉の関東4自治体だけ」のように限定するほうがよいです。「できるだけ狭く」というコンセプトで、副作用を少なくするのです。

 

実施期間もなるべく短いほうがいいです。感染者をぐっと減らせば…たいてい2週間程度で減るはずですが…さっとロックダウンを解除する。そうすれば経済社会への影響は最小限で済みます。

 

そして、短期間のうちに感染を抑え込むためには、できるかぎり完全に近い形で人の動きを止めなければならない。「狭く強く短く」がロックダウンを成功させる要件です。

 

 

岩田 健太郎

神戸大学病院感染症内科 教授 

 

 

僕が「PCR」原理主義に反対する理由 幻想と欲望のコロナウイルス

僕が「PCR」原理主義に反対する理由 幻想と欲望のコロナウイルス

岩田 健太郎

集英社インターナショナル

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