「法律的に日本でロックダウンはできない」は間違い
ロックダウンとは何か。その地域への人の出入りを止める。その地域に住んでいる人たちは自宅にとどまる。これがロックダウンです。
生活必需品を買うための外出は認めるとか、医療従事者の出入りは認めるとか、細則はいろいろあります。しかし原則として「その地域に人を入れず、出さない」「その地域に住んでいる人は自宅から出ない」がロックダウンです。
「日本には外出を規制する法律がない。だからロックダウンはできない」
そんなことを言う人がいます。しかしそれは間違いです。法律上、「外出をするな」とか「店は閉めろ」といったことを強制できないのは事実ですが、それは重箱の隅をつつく議論で、本質的な問題ではありません。日本でもロックダウンはできます。
「この地域に入らないでください」
「この地域から出ないでください」
「この地域に住んでいる人は外出しないでください」
「罰則はないけれど、協力してください」
国がそう言い続けるのがロックダウンです。
法律上の罰則規定は手段の一つであって、目的ではありません。目的は感染を終息させることです。
感染を終息させるという目的において、ロックダウンは最もパワフルな対策です。その効果には絶大なものがあります。
ロックダウンを成功させる要件は「狭く強く短く」
しかし、むやみにやるべきではありません。経済活動や社会活動が止まってしまう、という強い副作用があるからです。
感染が大規模に広がっていて、沈静化の見込みがない。あるいは、感染がさらに拡大する恐れがある。そうしたケースでは、とにかく感染を沈静化させないことには経済活動ができません。経済をいったん止めなければ、経済を元に戻せないわけです。
社会活動についても同じことが言えます。そうした事態においては、ロックダウンの副作用は吞み込むしかありません。
日本は南北に長い国でして、感染のクラスターが拡大しても国全体レベルの問題にはなりにくいです。よって、ロックダウンは「名古屋だけ」とか「兵庫県だけ」とか「東京都、神奈川、埼玉、千葉の関東4自治体だけ」のように限定するほうがよいです。「できるだけ狭く」というコンセプトで、副作用を少なくするのです。
実施期間もなるべく短いほうがいいです。感染者をぐっと減らせば…たいてい2週間程度で減るはずですが…さっとロックダウンを解除する。そうすれば経済社会への影響は最小限で済みます。
そして、短期間のうちに感染を抑え込むためには、できるかぎり完全に近い形で人の動きを止めなければならない。「狭く強く短く」がロックダウンを成功させる要件です。
岩田 健太郎
神戸大学病院感染症内科 教授