(※写真はイメージです/PIXTA)

不動産を売却して利益(譲渡所得)を得た場合、確定申告により所得税・住民税を納付することになりますが、その際、不動産の売却価格から控除できる費用等が定められています。もしも控除を忘れてしまうと、余分な税金を支払うことになるため、慎重にチェックすることが大切です。IPAX総合法律事務所の工藤敦子弁護士が解説します。

「取得費」がわからないときは、どうやって算出する?

【1】譲渡所得の取得費の範囲

 

譲渡所得の取得費には、不動産の購入価格、建物の建築費、購入時の税金(登録免許税、不動産取得税、特別土地保有税、印紙税など)、購入時に借主に対して支払った立退料、仲介手数料、設備費、改良費、造成費用、測量費などが含まれます。

 

また、購入した不動産の所有権について争いを解決するためにかかった訴訟費用、土地の利用を目的に、不要な建物付きの土地を購入した場合の建物の代金や取壊しの費用(おおむね1年以内に建物を取壊す必要があります)、不動産購入のための借入金にかかる利子(不動産の使用開始までの期間に対応するものに限る)、既に締結した売買契約を解除して他の物件を取得した場合の違約金も取得費になります。

 

【2】建物の取得費

 

建物の購入価格や建築費も取得費に含まれますが、購入価格や建築費の全額ではなく、減価償却相当費を差し引いた残額が取得費になります。

 

マンションや土地付きの建売住宅のように、土地と建物をセットで購入した場合など、土地を含めた全体の購入価格はわかるものの、建物単体の価格がわからない場合があります。その場合は、(土地には消費税がかからないので)購入時の消費税額から建物の価格を逆算する、建物の標準的な建築価額により建物の取得価格を計算する、土地と建物の固定資産税評価額の比率で案分して計算する、不動産鑑定士に土地と建物の時価を鑑定してもらい、その比率で案分して計算する、というような方法で建物の取得費を算出します。

 

建物の標準的な建築価額は、国税庁のウェブサイト「平成29年分譲渡所得の申告のしかた(記載例):建物の標準的な建築価格表など」に記載されています。

 

【3】取得費が不明なとき、取得費が低額のとき

 

不動産が先祖伝来のものであるとか、購入時の記録が残っていないため、取得費がわからない場合には、売却金額の5%相当額を取得費にすることができます。また、取得費がわかっていても、それが売却金額の5%相当額を下回る場合も、売却金額の5%相当額を取得費とすることができます。

「譲渡費用」にできるもの・できないもの

譲渡費用とは、不動産を売るために直接かかった費用です。譲渡費用には、仲介手数料、売主が負担した印紙税、借家人に支払った立退料、土地を売るために土地上の建物を取壊した場合の取壊し費用とその建物の損失額、より有利な条件で売るために既に締結した売買契約を解除した場合の違約金、借地権の売却につき地主の承諾をもらうために支払った名義書換費用などが含まれます。

 

他方、修繕費や固定資産税などその不動産の維持管理のための費用や、売却代金の取立てのための費用は、譲渡費用にはできません。

 

 

工藤 敦子
IPAX総合法律事務所 カウンセル弁護士

 

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