「足で稼ぐ=飛び込み営業」…質より量の時代
営業マンは、「足で稼ぐ」もの。私たちの世代の営業マンは、先輩からそう教わってきました。毎日、1軒でも多く客先を回り、とにかく顔をつないでおく。団地全部の家の扉を叩き、飛び込み営業をかける。そうしてとにかく外回りをし続けるのが、営業成績を上げるための王道であるといわれてきました。
この価値観は現在でも根強く残っており、いまだに「足で稼ぐ」を信条に、ひたすら飛び込み営業に精を出している営業マンをよく見かけます。そもそもなぜ、「足で稼ぐ」というスタイルが評価されるようになったのか。過去に遡れば、その理由が見えてきます。
戦後の日本はとにかくモノ不足であり、供給よりも需要が圧倒的に勝っていました。営業マンは、モノを持ってさえいけば売れる状況でした。
したがってどれだけの件数営業をかけられたかが売上に直結し、当時の営業マンは、御用聞きのように顧客のもとを回り続け、注文を取っていました。そこから足で稼ぐという言葉が生まれたのでしょう。
高度経済成長期に入ってしばらく経つと、必要なモノがそれなりに手に入るようになり、需要と供給のバランスが取れてきます。
営業マンとしては、訪問すれば必ず売れるという時代ではなくなり、いかに相手の問題や悩みを解決するかという営業技術も問われるようになっていきます。ただ、それでもまだ顧客との接点を数多く増やしたほうが有利であることに変わりはなく、足で稼ぐスタイルが主流でした。
このように、戦前から高度経済成長期の「大量生産大量消費」の世では、営業マンが「足で稼ぐ」時代であったといえます。
しかしその後、日本がバブル景気に沸いた頃から、供給が需要を上回り、モノが溢れる時代となります。消費者は、たくさんの候補のなかから自分の条件に合ったモノを選ぶようになり、いくら説得されようが「いらないものはいらない」という人が増えました。そのあたりから、ただひたすら外回りを続けるだけでは以前のような成績を上げるのが難しくなっていきました。
そして、「足で稼ぐ=飛び込み営業」を決定的に過去のものへと変えたのが、インターネットの登場でした。モノだけではなく情報まで溢れるようになり、消費者は商品やサービスに対する情報を多角的に手に入れたうえで、購入を検討するのが常識化していきました。
これを逆から紐解けば、いきなり営業マンが訪れたところで、その場で契約を結ぶ可能性は極めて低くなったということです。そうやって消費行動が変化しているのにもかかわらず、ただ闇雲に客先を回っているだけでは、営業成績は上がりません。
現在では、コロナ禍により対面営業の機会が制限されています。今後、テレワークやリモート面談が日常化するであろうことを考えても、「足で稼ぐ」営業スタイルから一刻も早く脱却せねば、食べていくのすら難しくなるでしょう。
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