税金が複雑なのは公平な税制を目指しているから
確定申告のために請求書やレシートなどを整理していると、1年間にあった出来事が思い返されます。
私の本職はライターなので、「こんな仕事をしたな」「取材であんなところに行ったっけ」というようなことを思い出しながら、確定申告の準備をしています。
そうしてできあがった確定申告書は、私にとっては1年間の成績表のようなものです。その年の売上や必要経費などが一目瞭然になり、最終的な税額もはっきりとわかります。
その瞬間、「去年は仕事がたくさんできてよかった」「節税もうまくできた」と達成感が得られます。そしてまた、つぎの1年に向けて気持ちを切り替えています。
私があらためて感じたのは「税金のしくみはやはり複雑」ということでした。できるだけわかりやすくお伝えするために、「得なのはどっち?」という観点からシンプルにまとめましたが、ケースバイケースのルールが多く、「大まかな考え方」と「細かいルール」を書き分けるバランスに苦慮しました。
税金のしくみが複雑なのは、「公平な税制」をめざしていることに理由があります。たとえば収入の低い人の税率を低くしたり、自宅の売却益に特例を設けたりしているのも、公平性を確保するためです。
しかし、このような配慮がなされた税制も、使われなくては意味がないと私は考えます。もし、同じような立場の人が、同じように利益を獲得したのに、節税について知っているか、知らないかによって負担額が違うというのは、やはり不公平です。
私は、幸いにして東京国税局の職員だったという経験から、税金のしくみを理解することができ、独立後は自身の節税にも活用しています。知識を大まかにでも頭に入れておいていただければ、税金に関して、より正しい選択をすることができるはずです。
もちろん、それぞれのシチュエーションによって活用できる情報は異なると思いますが、まずはひとつでもふたつでも、自身に取り入れられるアイデアがあれば、ぜひ実行してみてください。そのときは、年々少しずつ変わる税金のルールをあらためて確認していただければと思います。
本記事は「確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち?」(河出書房新社)の一部を抜粋し、2021年5月現在の法令等に合わせ加筆したものです。法改正などにより、内容が変更となる可能性があります。
小林 義崇
フリーライター 元国税専門官
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