本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「宅森昭吉のエコノミックレポート」の『経済指標解説』を転載したものです。

 

大企業・製造業・業況判断DI+19程度と18年12月調査以来の水準を予測

 

新型コロナによる景況感の大幅悪化から、4期連続で持ち直しを予測

 

大企業・非製造業・業況判断DIは+4程度と20年3月調査以来のプラスを予測

 

 

●6月調査日銀短観では、大企業・製造業の業況判断DIが+19程度と3月調査の+5から14ポイント程度改善し18年12月調査の+19以来の水準になると予測した。新型コロナウイルスの感染拡大防止のため3度目の緊急事態宣言が発出された時期がかなり調査期間に重なるため、繊維や食料品など芳しくない業種もあろうが、半導体市場などが活況で、輸出や生産の増加基調継続という経済活動回復の効果が出て、製造業全体の景況感は大幅に改善しそうだ。

 

●また、大企業・非製造業の業況判断DIは+4程度と、こちらは3月調査の▲1から5ポイント程度改善し、20年3月調査の+8以来のプラスに転じるとみた。通信などは引き続き高めのDIになろう。また小売などでは、緊急事態宣言の影響などで厳しい回答が多いだろうが、足元のワクチン接種加速の動きなどを反映した見方も出るとみた。

 

●この予測は、日銀短観DIと連動性が高いことが知られているQUICK短観(6月調査)やロイター短観(6月調査)などを参考にした。

 

●6月15日に発表されたQUICK短観6月調査の調査期間は6月1日から6月10日である。製造業の業況判断DIは3月調査の+4から22ポイント改善し+26となった。製造業の業況判断DIは18年10月の+28以来の高水準である。また、非製造業の業況判断DIは3月調査の+9から9ポイント改善の+18となった。

 

 

●6月17日に発表されたロイター短観6月調査の調査期間は6月3日から6月14日である。6月調査400社ベースの製造業の業況判断DIは3月調査の+6から16ポイント改善し+22になった。18年12月の+23以来の高水準である。また、6月調査200社ベースの製造業の業況判断DIは3月調査の+11から16ポイント改善し+27になった。

 

●一方、ロイター短観6月調査400社ベースの非製造業の業況判断DIは3月調査の▲5から5ポイント改善し0になった。また、6月調査200社ベースの非製造業の業況判断DIは3月調査の+3から7ポイント改善し+10になった。

 

 

 

●また、鉱工業生産指数は製造業の業況判断DIと相関がある。21世紀に入ってから21年1~3月期までの期間で、鉱工業生産指数と大企業・業況判断DIとの相関係数は0.736で、中小企業・業況判断DIとの相関係数は0.647である。21年4月分の鉱工業生産指数は100.0(2015年=100)で、5月分・6月分を製造工業生産予測指数で延長すると、4~6月期は105.5となり、19年7~9月期の101.7以来の水準になる。

 

●なお、6月調査の大企業・製造業の業況判断DIが予測通り+19程度なら、3月調査の「先行き見通し」+4を15ポイント程度上回ることになる。事前の予想を上回り、思ったより景況感が上振れたことになる。また大企業・非製造業が予測通+4程度なら、3月調査の「先行き見通し」▲1を5ポイント程度上回る。非製造業でも前回調査時の先行き予想を上回ったということになろう。

 

●QUICK短観6月調査の製造業の9月までの「先行き見通し」は+25で6月実績の+26より1ポイント悪化の見込み、一方、非製造業の6月までの「先行き見通し」は+24で6月実績の+18から6ポイント改善予想である。

 

●一方、ロイター短観6月調査の9月までの「先行き見通し」は、製造業・400社ベースで+21と6月実績の+22から1ポイント悪化の見込み、製造業・200社ベースで+20と6月実績の+27から7ポイント悪化の見込みである。一方、非製造業・400社ベースの9月までの「先行き見通し」は+10と、6月実績の0から10ポイント改善の見込み、非製造業・200社ベースで+17と6月実績の+10から7ポイント改善の見込みである。

 

●日銀短観の大企業9・業況判断DIの月までの「先行き見通し」は、QUICK短観やロイター短観などを参考にして、製造業では自動車産業での半導体不足の影響などを考慮し、6月実績比1ポイント悪化の+18程度、非製造業はワクチン接種加速のプラス面の影響期待で6月実績比8ポイントの改善の+12程度と予測した。

 

●6月調査日銀短観の中小企業の業況判断DIは製造業が▲5程度と3月調査の▲13から8ポイント程度改善すると予測した。非製造業は3月調査の▲11から1ポイント程度改善し▲10程度になるとみた。この予測値は、鉱工業生産指数の動向や、景気ウォッチャー調査の企業動向関連の現状水準判断DIなどを参考にして予測した。

 

●参考データの景気ウォッチャー調査の企業動向関連の現状水準判断DI・季節調整値の最近の推移は製造業が20年12月調査34.4、21年1月調査35.7、2月調査40.0、3月調査41.3、4月調査39.7、5月調査41.1、景気判断分岐点の50を下回る水準ではあるものの底堅く推移してきている。

 

●一方、非製造業は20年12月調査33.4、21年1月調査31.4、2月調査34.8、3月調査38.4、4月調査38.0、5月調査38.8と、こちらも景気判断分岐点の50をかなり下回る水準での推移であるが、緩やかに上昇している。なお、日銀短観は水準の調査なので、景気ウォッチャー調査の方向性の現状判断DIではなく、参考データの現状水準判断DIの方を重視した。

 

●日銀短観の中小企業・製造業の業況判断DIが▲5程度と予測通りなら、3月調査の「先行き見通し」の▲12より7ポイント高い水準で、事前の見通しより改善したことになろう。また中小企業・非製造業が▲10程度と予測通りなら、3月調査の「先行き見通し」の▲16を6ポイント上回ったことになる。こちらも景況感が事前に思ったより改善したことになろう。

 

●日銀短観の中小企業・業況判断DIの9月までの「先行き見通し」は、製造業で6月実績比1ポイント改善の▲4程度、一方、非製造業は6月実績比1ポイント悪化の▲11程度と予測した。中小企業・非製造業では先行きをいつも慎重にみるというクセも考慮した。ワクチン接種が加速する中、新型コロナウイルスの感染が先行き収束に向かうという期待感が景況感改善に繋がろう。

 

●20年度の大企業・全産業の設備投資計画は前年度比▲5.1%程度と予測した。3月調査の同▲3.8%から減少率が拡大すると予測した。新型コロナウイルスの影響による先行きの不透明さから、年度末にかけ企業が設備投資に慎重になったとみた。なお、日銀短観の設備投資の予測には、法人企業景気予測調査や、景気ウォッチャー調査から作成する設備投資DI、過去の修正パターンなどを参考にした。

 

●21年度の大企業・全産業の設備投資計画は前年度比+3.5%程度と予測した。3月調査の同+3.0%から、増加率が製造業中心に拡大すると予測した。

 

●20年度の中小企業・全産業の設備投資計画は前年度比▲10.0%程度と、3月調査の同▲11.1%から上方修正されると予測した。中小企業の設備投資計画は例年3月調査が弱く、その後は1年後の3月調査まで調査の度に改善していく傾向があるが、今年度も6月調査は3月調査よりいつもの年よりは小幅だが改善するとみた。

 

●21年度の中小企業・全産業の設備投資計画は前年度比▲5.0%程度と予測した。3月調査の同▲5.5%から減少率がやや縮小すると予測した。

 

<6月調査日銀短観・予測値>

1)大企業

 

6月製造業DI      +19

6月非製造業DI   +4

9月製造業DI      +18

9月非製造業DI   +12

2020年度設備投資計画(全産業)前年度比  ▲5.1%

2021年度設備投資計画(全産業)前年度比  +3.5%

 

2)中小企業

 

6月製造業DI      ▲5

6月非製造業DI   ▲10

9月製造業DI      ▲4

9月非製造業DI   ▲11

2020年度設備投資計画(全産業)前年度比  ▲10.0%

2021年度設備投資計画(全産業)前年度比  ▲5.0%

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2021年6月調査 日銀短観 予測』を参照)。

 

(2021年6月17日)

 

宅森 昭吉

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

理事・チーフエコノミスト

 

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