ローン返済中に大規模災害などに遭って自宅が損傷した場合、建物の修理や生活基盤の立て直しのためにさらなるローンが必要になることがあります。しかし、行政や金融機関にもさまざまな救済措置が用意されているため、慌てないことが大切です。具体的な方法を紹介します。※本記事は、『自然災害に備える!火災・地震保険とお金の本』(自由国民社)より抜粋・再編集したものです。
災害時の「住宅ローンの取り扱い」3つのケース
■ケース1:災害で住宅が被害を受けた場合の住宅ローンの支払い
住宅が被害を受け、住めなくなったとしても住宅ローンの返済はなくなりません。ただし、当面は生活を再建するために少しでも多くのお金が必要になります。通常、住宅ローンの返済が滞ると延滞となってしまいますが、災害時においては、金融機関も被災者とわかればその後、延滞を取り消してくれます。早急に手続きをしなくても大丈夫ですので、手続きできるようになってから、金融機関に連絡をするようにしてください。
なお、支払いが厳しい場合にも、金融機関は相談に応じてくれます。当面の間、元金を据え置く(返済しない)ことも可能です。住宅金融支援機構では、東日本大震災や暴風雨や洪水で被害を受けた場合の返済の特例があります。り災割合による元金据置期間の延長や元金据置期間の金利の引下げ、その利息分の支払い繰り延べなどです。
■ケース2:災害で収入が減ってしまった場合のローン返済の見直し
返済の据え置き、返済期間の延長、返済額の引下げなど、返済方法の見直しができます。
①返済額を引き下げる
返済期間を延長することで毎月の返済額を引き下げることができます。ただし、期間が延びる分、総返済額は多くなります。なお、当面の間返済額を引き下げてもらい、生活の目途がついた時点で再度返済額を多くすることも可能です。
②元金返済を据え置く
当面の間、返済額をできる限り少なくしたい場合には、金融機関に相談することで元金返済を据え置くことも可能です。通常はこの間、利息のみの支払になりますが、住宅金融支援機構では、据置期間中の利息分を将来の返済に繰り延べる方法もあります。これによって、据置期間中の返済額をゼロにすることもできます。
住宅金融支援機構では、災害により住宅が損害を受けた場合のみならず、収入が著しく減少した場合や、債務者本人や家族が死亡したために返済が厳しくなった場合なども対象としています。民間金融機関においては、個別対応となりますが、まずは相談に行ってみることをお勧めします。
■ケース3:家の再建のための借入れ
住宅金融支援機構では低金利の災害復興住宅融資が、民間金融機関においても災害復旧のためのローンがあります。
①住宅金融支援機構「災害復興住宅融資」
住宅金融支援機構で行っている「災害復興住宅融資」は、災害により被害が生じた住宅の所有者・居住者で、地方公共団体からり災証明書の発行を受けた場合に利用できる融資です。一般の住宅ローンよりも低金利で利用できることが特徴です。東日本大震災で被災された方向けの基本融資額の部分については、別途金利が定められていて、当初5年間は金利ゼロ%、5年間は元金据置期間とすることもできるようになっています。
「建設・購入資金」は、住宅が全壊した旨の「り災証明書」の発行を受けた人が利用できるものです。なお、大規模半壊、半壊であっても、住宅の修復が不可能または困難な場合にも利用できる場合があります。新築住宅なのか、中古住宅なのか等によって融資限度額や最長返済期間は異なります。
「補修資金」は、住宅に被害を受けた旨の、り災証明書の発行を受けた場合に利用できます。また、東日本大震災では、住宅に被害はなかったが、よう壁が損壊したなど宅地の補修について「災害復興宅地融資」を利用することができました。なお、これらの融資は、いずれも、60歳以上の親のために借入れする「親孝行ローン」で利用することもできます。
②民間金融機関の融資
民間金融機関でも被災した方向けの特別の住宅ローンを取り扱っている場合があります。店頭金利から一定の金利を引き下げて、低い金利での融資、また、一定期間は元金据え置きなどで、負担を少なく利用してもらうものになっています。
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金融デザイン株式会社 代表取締役
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
1968年愛知県生まれ。南山大学経営学部卒業後、北米大陸をオートバイで周遊。帰国後、保険代理店の手伝いをしたことで金融の世界を知る。その“奇妙”な世界に疑問を感じ「お金に関する情報形成」「売り手と買い手がハッピーになる金融コンテンツづくり」をミッションとした、株式会社マネーライフナビを設立(1996年)。
FP(ファイナンシャルプランナー)の実務をこなしながら多数の金融コンテンツ制作を手がける。2017年9月に社名を金融デザイン株式会社に変更。インフォグラフィックスやウェブのデザインまで領域を広げる。自社開発の「持ち味マネーカード(お金占い®)」を武器に、個人向けオンラインサービス「お金の知恵アカデミー」を展開中。
【主な著書】
生命保険知って得する数字のカラクリ(技術評論社)
損害保険知って得する数字のカラクリ(技術評論社)
損害保険を見直すならこの一冊(自由国民社)
自然災害に備える!火災・地震保険とお金の本(自由国民社)
【運営サイト】
お金をためる・ふやすで失敗しないための3か条を学ぶ「お金の知恵アカデミー」発信の「1分で身につくお金の知恵」を掲載。
https://okane-chie.com/
著者プロフィール詳細
連載記事一覧
連載自然災害に備える!火災・地震保険とお金の基礎知識
金融デザイン株式会社 取締役
1級ファイナンシャルプラニング技能士
宅地建物取引士
大学卒業後、信託銀行に就職、人事部配属。宅地建物取引主任者の資格を取得し、念願叶い不動産部で働くも、お客様と銀行のハザマで苦悩する。「この人、この不動産買っても大丈夫だろうか」と思っても言えなかった罪悪感がその後私をFPへ導いてくれたのかも。信託銀行退職後、イベント会社、不動産コンサルティング会社を経て、1996年、ファイナンシャルプランナーとして独立。2010年まで女性3人で活動、年間300件の相談業務を行う。
2010年より金融デザイン株式会社(旧株式会社マネーライフナビ)の取締役。長年、個人のお客様の声を直接聞いてきたからこそ作れるコンテンツ作成を、個人向けには失敗しないためのお金の知恵を学ぶオンラインサービス「お金の知恵アカデミー」を展開中。
【主な著書】
「住宅ローン」賢い人はこう借りる! (共著、PHP研究所)
「マイホーム」賢い人はこうして買う! (共著、PHP研究所)
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自然災害に備える!火災・地震保険とお金の本(自由国民社)
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株式会社MKM 代表取締役
宅地建物取引士
2級ファインシャル・プランニング技能士
管理業務主任者
賃貸不動産経営管理士
1970年千葉県生まれ。住友林業株式会社、家業の建設会社でもある三上板金工事 有限会社、個人向け不動産コンサルティングを行う株式会社さくら事務所、中古 リノベ事業をリノベ不動産として展開する株式会社WAKUWAKU、総合資格学院の宅建講座の宅地建物取引業専属講師を経て、株式会社MKMを立ち上げる。資格予備校にて宅地建物取引士試験講座の宅地建物取引業法専属講師。個人及び法人向け講演および執筆実績多数。
【主な著書】
損害保険を見直すならこの一冊(自由国民社)
自然災害に備える!火災・地震保険とお金の本(自由国民社)
【運営サイト】
宅地建物取引業者向けに中立的な第三者として、取引の安全性を図るエスクローサービスに取り組んでいます。
https://mkm-escrow.com/
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