近年、台風や豪雨などによる災害が多発し、火災保険の重要性が再認識されています。ここでは保険金に関する基礎知識や、保険加入前にチェックしたいポイントについて解説します。※本記事は、『自然災害に備える!火災・地震保険とお金の本』(自由国民社)より抜粋・再編集したものです。
大家が火災保険に入っていても、賃借人は油断禁物
賃貸住宅を借りるとき契約する火災保険の対象は、あくまでも家財のみです。
これは、一般的に火災保険は建物の所有者が加入しますので、通常は賃貸住宅の大家さんが火災保険に加入しているからです。
賃借人による失火で借りた建物に損害が発生した場合、失火責任法により民法709条の過失責任はありませんが、賃貸住宅を借りたときは、大家さんに対し賃貸住宅をしっかり管理しなければならない義務(善管注意義務)や賃貸借契約に基づいて賃貸住宅を原状に回復して返還しなければならない義務(原状回復義務)があるため、最終的には損害を賠償しなくてはなりません。
また、大家さんが建物に火災保険を掛けていれば、保険金が支払われることになりますが、この場合でも賃貸住宅を借りている人に故意や重大な過失があったときは、保険金を支払った保険会社から賠償請求される恐れもあるのです。
そこで、賃貸住宅を借りているときの賠償責任を補償する「借家人賠償責任補償※2」といったオプションを、家財の火災保険にセットすることが一般的です。なお、「借家人賠償責任補償」は大家さんに対する補償ですので、洗濯機のホースがはずれて階下に水を漏らしてしまった場合などに備える「個人賠償責任補償特約※3」も合わせて検討したいところです。
※2、※3:特約名やオプション名は保険会社により異なります。
「水災・風災」の補償はハザードマップを見て検討を
ここ数年、頻繁に発生している大雨や集中豪雨による浸水や水害、土砂崩れなどは「水災」で補償することになります。この「水災」は、保険料に占める割合が大きいため、浸水リスクが低い高台の一戸建てや、マンションの高層階では補償の対象外(不担保)にすることで大幅に保険料を節約することができます。
「風災」も、保険料に占める割合が比較的大きいものです。台風や雪の心配があまりない地域や、台風や風に強い建物なら被害も少ないと判断し、「風災」を補償の対象外にするとやはり保険料が下がります。
ただし、「水災」も「風災」もただ保険料が安くなるといった理由だけで安易に補償の対象外にするのは禁物です。
「水災」は、大雨や河川が氾濫した際に想定される浸水の深さを地図で表した「洪水ハザードマップ」や「浸水予想区域図」、過去の水害記録となる「浸水履歴図」、高潮による氾濫を想定した「高潮浸水想定区域図」といった資料を参考にしたり、土砂災害警戒区域※4に該当していないか土砂災害ハザードマップで確認したりしながら慎重に検討しましょう。
※4:建築物に損壊が生じ住民等の生命又は身体に著しい危害が生じるおそれがある地域。
「風災」についても、その土地の立地条件や建物構造、屋根形状、築年数など、さまざまな条件を十分加味したうえで補償の対象外にするかどうか検討しましょう。
石川 英彦
金融デザイン株式会社 代表取締役
高田 晶子
金融デザイン株式会社 取締役
三上 隆太郎
株式会社MKM代表取締役
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金融デザイン株式会社 代表取締役
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
1968年愛知県生まれ。南山大学経営学部卒業後、北米大陸をオートバイで周遊。帰国後、保険代理店の手伝いをしたことで金融の世界を知る。その“奇妙”な世界に疑問を感じ「お金に関する情報形成」「売り手と買い手がハッピーになる金融コンテンツづくり」をミッションとした、株式会社マネーライフナビを設立(1996年)。
FP(ファイナンシャルプランナー)の実務をこなしながら多数の金融コンテンツ制作を手がける。2017年9月に社名を金融デザイン株式会社に変更。インフォグラフィックスやウェブのデザインまで領域を広げる。自社開発の「持ち味マネーカード(お金占い®)」を武器に、個人向けオンラインサービス「お金の知恵アカデミー」を展開中。
【主な著書】
生命保険知って得する数字のカラクリ(技術評論社)
損害保険知って得する数字のカラクリ(技術評論社)
損害保険を見直すならこの一冊(自由国民社)
自然災害に備える!火災・地震保険とお金の本(自由国民社)
【運営サイト】
お金をためる・ふやすで失敗しないための3か条を学ぶ「お金の知恵アカデミー」発信の「1分で身につくお金の知恵」を掲載。
https://okane-chie.com/
著者プロフィール詳細
連載記事一覧
連載自然災害に備える!火災・地震保険とお金の基礎知識
金融デザイン株式会社 取締役
1級ファイナンシャルプラニング技能士
宅地建物取引士
大学卒業後、信託銀行に就職、人事部配属。宅地建物取引主任者の資格を取得し、念願叶い不動産部で働くも、お客様と銀行のハザマで苦悩する。「この人、この不動産買っても大丈夫だろうか」と思っても言えなかった罪悪感がその後私をFPへ導いてくれたのかも。信託銀行退職後、イベント会社、不動産コンサルティング会社を経て、1996年、ファイナンシャルプランナーとして独立。2010年まで女性3人で活動、年間300件の相談業務を行う。
2010年より金融デザイン株式会社(旧株式会社マネーライフナビ)の取締役。長年、個人のお客様の声を直接聞いてきたからこそ作れるコンテンツ作成を、個人向けには失敗しないためのお金の知恵を学ぶオンラインサービス「お金の知恵アカデミー」を展開中。
【主な著書】
「住宅ローン」賢い人はこう借りる! (共著、PHP研究所)
「マイホーム」賢い人はこうして買う! (共著、PHP研究所)
損害保険を見直すならこの一冊(自由国民社)
自然災害に備える!火災・地震保険とお金の本(自由国民社)
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株式会社MKM 代表取締役
宅地建物取引士
2級ファインシャル・プランニング技能士
管理業務主任者
賃貸不動産経営管理士
1970年千葉県生まれ。住友林業株式会社、家業の建設会社でもある三上板金工事 有限会社、個人向け不動産コンサルティングを行う株式会社さくら事務所、中古 リノベ事業をリノベ不動産として展開する株式会社WAKUWAKU、総合資格学院の宅建講座の宅地建物取引業専属講師を経て、株式会社MKMを立ち上げる。資格予備校にて宅地建物取引士試験講座の宅地建物取引業法専属講師。個人及び法人向け講演および執筆実績多数。
【主な著書】
損害保険を見直すならこの一冊(自由国民社)
自然災害に備える!火災・地震保険とお金の本(自由国民社)
【運営サイト】
宅地建物取引業者向けに中立的な第三者として、取引の安全性を図るエスクローサービスに取り組んでいます。
https://mkm-escrow.com/
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