加速する米国経済の再開 回復は「モノ消費」から「コト消費」へ

新型コロナワクチンの接種が進む米国では経済再開が加速している。直接給付金によって蓄積した過剰貯蓄の取り崩しや、経済正常化に伴う消費機会の拡大によって、米国の小売売上高はすでにコロナ前の水準を大きく上回っている。しかし、商品の所有によって価値を見出す「モノ消費」は回復する一方、体験や経験に価値を見出す「コト消費」の回復はまだ道半ばだ。

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ワクチン接種で加速する米国経済の再開

Our World in Dataの集計によれば、米国の新型コロナワクチンの接種回数は6月11日時点で人口100人当たり91.65回となっており、すでに「経済の正常化」が現実味を帯びてきている。その状況は、米国の小売売上高を見れば一目瞭然だ。今年4月の米国小売売上高(除く飲食サービス、自動車ディーラー、ガソリン、建設資材)は3,359億ドルとなり、コロナショック前の2020年3月の2,959億ドルを13.5%も上回っている(図表1)。
 

月次、季調済、単位:億ドル、期間:2019年1月~2021年4月 出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ投信投資顧問作成
[図表1]米国小売売上高(除く飲食サービス、自動車ディーラー、ガソリン、建設資材) 月次、季調済、単位:億ドル、期間:2019年1月~2021年4月
出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ投信投資顧問作成

 

特に増加率が高かった主な品目をみると、家具が2020年3月比で+49.8%、電気製品が同+37.4%、衣料品が同104.4%だった。

 

米国では個人に対して多額の給付金(注:所得制限あり)が付与されたことも大きい。新型コロナ対策として、トランプ政権下では2020年3月に1人当たり1,200ドル、2020年12月に同600ドル、そしてバイデン政権下では今年3月に同1,400ドルが付与されることが決まり、合計額は単純計算で3,200ドルにもなる。この一部が過剰貯蓄として積みあがっていたことを考慮すれば、足元の好調な消費は貯蓄の取り崩し分も含まれている可能性が高い。

今後は「モノ消費」から「コト消費」へ拡大か?

前述した家具や電気製品、衣料品などの商品の所有に価値を見出す「モノ消費」は好調に推移する半面、所有では得られない体験や経験に価値を見出す「コト消費」の回復はまだ道半ばだ。

 

米国の空港利用者数を見ると、徐々に回復している様子がうかがえるが、コロナ前の1日当たり200万~250万人の水準には達していないことが分かる(図表2)。

 

日次、単位:万人、期間:2019年1月1日~2021年6月9日 出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ投信投資顧問作成
[図表2]米国空港利用者数の推移(保安検査所を通過した人数) 日次、単位:万人、期間:2019年1月1日~2021年6月9日
出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ投信投資顧問作成

 

また、世界各国で「マリオット」や「ザ・リッツ・カールトン」などのブランド名でホテルを運営・フランチャイズ展開するマリオット・インターナショナルの北米ホテル稼働率をみても、2021年1-3月期は27.9%とコロナ前の2020年1-3月期の55.9%に程遠いことが確認できる(図表3)。

 

四半期、単位:%、期間:2020年1-3月期~2021年1-3月期 ※北米ホテル稼働率はフルサービスホテルの統計 出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ投信投資顧問作成
[図表3]マリオット・インターナショナル北米ホテル稼働率 四半期、単位:%、期間:2020年1-3月期~2021年1-3月期
※北米ホテル稼働率はフルサービスホテルの統計
出所:ブルームバーグのデータを基にピクテ投信投資顧問作成

 

しかし、人と接する機会が多い「コト消費」の回復も時間の問題と言えるだろう。空港利用者数の改善が示すとおり、回復基調に変化は無い。ワクチン接種が進み、新型コロナ感染に対する警戒感が徐々に後退すれば、いよいよ「コト消費」も正常化に向かう可能性がある。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『加速する米国経済の再開 回復は「モノ消費」から「コト消費」へ』を参照)。

 

(2021年6月14日)

 

 

田中 純平

ピクテ投信投資顧問株式会社

ストラテジスト

 

 

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ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト 

日系運用会社に入社後、14年間一貫して外国株式の運用・調査に携わる。主に先進国株式を対象としたアクティブ・ファンドの運用を担当し、北米株式部門でリッパー・ファンド・アワードを受賞。アメリカ現地法人駐在時は中南米株式ファンドを担当し、新興国株式にも精通。ピクテ入社後は、ストラテジストとしてセミナーやメディアなどを通じて投資家への情報提供に努める。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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連載PICTETマーケットレポート・Deep Insight

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