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ブラジル21年度予算法案:ボルソナロ大統領、支出を抑えた法案に署名
ブラジルのボルソナロ大統領は、2021年度予算法案に署名しました。ブラジルの議員らが推すプロジェクトや行政機関の裁量的経費への支出198億レアル(約3900億円)について拒否権を行使したほか、裁量的経費90億レアルを追加で凍結する方針を示しました。これは財政規律を重んじるゲジス経済相を部分的に支援したこととなります。数週間にも及んだ経済相チームと議会との対立は、財政規律の維持という格好で終止符が打たれたことになります。
どこに注目すべきか:21年度予算、財政規律、新規感染者数、利上
ブラジルレアルは新型コロナウイルスの影響で昨年3月頃に大幅に売られ、その後の対応策で一時回復しましたが、足元まで全般に軟調な展開となっています。レアル安の背景はブラジル国内の感染再拡大、財政不安、金融緩和などです。レアル安要因払拭は程遠いものの、今月になり、レアルをサポートする要因も見え始めています。
ブラジルは資源国であり、中国との貿易も活発な点は通貨レアルの押上げ要因ですが、この1年程は先に示した要因で波に乗り切れませんでしたが変化の兆しも見られます。
まず、新型コロナの1日あたりの新規感染者数を見ると、依然水準は高いものの7日移動平均で足元5万人台と、3月中旬の7万人台から減少しています(図表1参照)。
新規感染者に遅行する傾向がある死亡者数も減少しています。昨年後半から見られた感染者数や死亡者数とレアルの関係から、新型コロナの動向によってはレアルのサポート要因となる可能性も考えられます。
2つ目はブラジルの財政問題に改善の兆しが見られたことです。21年度予算は歳出を抑えた形で成立しました。ブラジルレアルの財政規律が失われるとの懸念が昨年からレアルの下押し要因となっていました。新型コロナへの対応の失敗を、ばらまきとも言える財政政策でやり過ごし財政規律が揺らいだことに市場は失望しました。その点21年度予算では規律への配慮も見られます。
もっとも新型コロナ対策は別枠とするなど判断に迷う点もあります。それでも財政政策の姿勢に違いが見られます。なお、先日の米国主催の気候変動サミットに参加したボルソナロ大統領はアマゾン熱帯雨林地域での違法伐採に対応する意向を述べています。どこまで本気か知る由もありませんが、何かしらの変化は伺えます。
最後に、金融政策です。ブラジルの経済指標を見るとインフレ率は6%台と急上昇しています。一方で新型コロナへの不安も加わり消費者心理は3月急速に悪化しました(図表2参照)。
このような中、ブラジル中央銀行は前回の会合で利上げに舵を切りインフレへ抑制を重視する(正しい)対応を選択しました。加えてブラジル中銀は次回の会合でも大幅な利上げを示唆しています。もっとも、インフレ抑制には現在の政策金利2.75%を倍以上に引き上げる必要があると市場は見ています。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『ブラジルレアル改善の鍵は持続性では?』を参照)。
(2021年4月27日)
梅澤 利文
ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト
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