ブラジルレアルは新型コロナウイルスの影響で昨年3月頃に大幅に売られ、その後の対応策で一時回復しましたが、足元まで全般に軟調な展開となっています。レアル安の背景はブラジル国内の感染再拡大、財政不安、金融緩和などです。レアル安要因払拭は程遠いものの、今月になり、レアルをサポートする要因も見え始めています。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報・ヘッドラインを転載したものです。

「相続税の税務調査」に 選ばれる人 選ばれない人
>>1月16日(木)開催・WEBセミナー

ブラジル21年度予算法案:ボルソナロ大統領、支出を抑えた法案に署名

ブラジルのボルソナロ大統領は、2021年度予算法案に署名しました。ブラジルの議員らが推すプロジェクトや行政機関の裁量的経費への支出198億レアル(約3900億円)について拒否権を行使したほか、裁量的経費90億レアルを追加で凍結する方針を示しました。これは財政規律を重んじるゲジス経済相を部分的に支援したこととなります。数週間にも及んだ経済相チームと議会との対立は、財政規律の維持という格好で終止符が打たれたことになります。

どこに注目すべきか:21年度予算、財政規律、新規感染者数、利上

ブラジルレアルは新型コロナウイルスの影響で昨年3月頃に大幅に売られ、その後の対応策で一時回復しましたが、足元まで全般に軟調な展開となっています。レアル安の背景はブラジル国内の感染再拡大、財政不安、金融緩和などです。レアル安要因払拭は程遠いものの、今月になり、レアルをサポートする要因も見え始めています。

 

ブラジルは資源国であり、中国との貿易も活発な点は通貨レアルの押上げ要因ですが、この1年程は先に示した要因で波に乗り切れませんでしたが変化の兆しも見られます。

 

まず、新型コロナの1日あたりの新規感染者数を見ると、依然水準は高いものの7日移動平均で足元5万人台と、3月中旬の7万人台から減少しています(図表1参照)。

 

日次、期間:2020年1月20日~2021年4月26日、人数は7日移動平均 出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表1]ブラジルレアル(対ドル)、コロナの感染者と死亡者数 日次、期間:2020年1月20日~2021年4月26日、人数は7日移動平均
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

新規感染者に遅行する傾向がある死亡者数も減少しています。昨年後半から見られた感染者数や死亡者数とレアルの関係から、新型コロナの動向によってはレアルのサポート要因となる可能性も考えられます。

 

2つ目はブラジルの財政問題に改善の兆しが見られたことです。21年度予算は歳出を抑えた形で成立しました。ブラジルレアルの財政規律が失われるとの懸念が昨年からレアルの下押し要因となっていました。新型コロナへの対応の失敗を、ばらまきとも言える財政政策でやり過ごし財政規律が揺らいだことに市場は失望しました。その点21年度予算では規律への配慮も見られます。

 

もっとも新型コロナ対策は別枠とするなど判断に迷う点もあります。それでも財政政策の姿勢に違いが見られます。なお、先日の米国主催の気候変動サミットに参加したボルソナロ大統領はアマゾン熱帯雨林地域での違法伐採に対応する意向を述べています。どこまで本気か知る由もありませんが、何かしらの変化は伺えます。

 

最後に、金融政策です。ブラジルの経済指標を見るとインフレ率は6%台と急上昇しています。一方で新型コロナへの不安も加わり消費者心理は3月急速に悪化しました(図表2参照)。

 

月次、期間:2017年3月~2021年3月、インフレ率はIPCA、前年同月比 出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表2]ブラジルの消費者信頼感指数とインフレ率の推移 月次、期間:2017年3月~2021年3月、インフレ率はIPCA、前年同月比
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

このような中、ブラジル中央銀行は前回の会合で利上げに舵を切りインフレへ抑制を重視する(正しい)対応を選択しました。加えてブラジル中銀は次回の会合でも大幅な利上げを示唆しています。もっとも、インフレ抑制には現在の政策金利2.75%を倍以上に引き上げる必要があると市場は見ています。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『ブラジルレアル改善の鍵は持続性では?』を参照)。

 

(2021年4月27日)

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社

運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

日本経済の行方、米国株式市場、新NISA、オルタナティブ投資…
圧倒的知識で各専門家が解説!カメハメハ倶楽部の資産運用セミナー

 

カメハメハ倶楽部セミナー・イベント

 

【1/7開催】<令和7年度>
税制改正大綱を徹底解説
最新情報から見る資産運用への影響と対策

 

【1/8開催】オルカン、S&P500…
「新NISA」の最適な投資対象とは
金融資産1億円以上の方だからできる活用法

 

【1/9開催】2025年の幕開け、どうなる?日本株
長いデフレ環境を生き抜いたスパークスが考える
魅力的な企業への「長期集中投資」

 

【1/9開催】相続人の頭を悩ませ続ける
「共有名義不動産」の出口は“売却”だけじゃない!
問題点と最新の解決策を藤宮浩氏が特別解説

 

【1/12開催】相続税の
「税務調査」の実態と対処方法
―税務調査を録音することはできるか?
【見逃し配信special】

 

 

【ご注意】
●当レポートはピクテ投信投資顧問株式会社が作成したものであり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。当レポートに基づいて取られた投資行動の結果については、ピクテ投信投資顧問株式会社、幻冬舎グループは責任を負いません。
●当レポートに記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当レポートは信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当レポート中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資家保護基金の対象とはなりません。
●当レポートに掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録
会員向けセミナーの一覧