(※写真はイメージです/PIXTA)

相続財産のなかに「不動産」が多く含まれると、相続トラブルに発展しやすいとされています。それはなぜでしょうか? 本記事では、不動産を円滑に相続する方法を中心に見ていきます。※本連載は、平野克典氏と金子嘉徳氏の共著『相続のお守り』(総合法令出版)より一部を抜粋・再編集したものです。

「代償分割」と「換価分割」の使い分け方と注意点

簡単には分けられない不動産を、どのようにして相続すればいいのでしょうか。先ほどの「共有」も1つですが、トラブルの原因となります。ここでは「代償分割」と「換価分割」を考えてみます。

 

「代償分割」とは特定の相続人が不動産を単独で相続してほかの相続人に対して代償金を現金・その他の財産で支払う方法、「換価分割」とは不動産を売却した上で現金を分ける方法です。

 

不動産を相続して所有することを希望する相続人がいれば、代償分割を考えましょう。しかし、ほかの相続人へ現金を支払う必要があるため、しっかりとした計算が必要です。

 

ただし、これらは遺産分割協議書の書き方に注意が必要です。換価分割については、相続人のうち1人が一旦不動産を相続してその売却代金を分け合う、という考え方から、ただ「長男が相続する」とだけ記載してはいけません。

 

これでは、長男が得た売却代金をほかの相続人にあげた、すなわち贈与として扱われてしまうのです。当然、贈与税が発生します。これを避けるためには、「長男の名義に相続登記をして換価し、売却代金を共同相続人で均等に分配する」旨を明示するのが正解です。

 

代償分割についても、税務署の取扱いは同じです。そのため、「長女が不動産を取得する代償として、次女に金○万円を支払う」旨を明示しないと、贈与税を課されることに注意しましょう。

 

◆アドバイス

遺産分割協議には、時間がかかるケースが多いです。もし、相続財産に賃貸アパートが含まれていたら、その間に賃料収入は発生します。この利益は法定相続分に応じて取得することになります。

売却せずに相続したほうが相続税が抑えらえるケースも

不動産を相続しても相続税を払えない、代償分割をするだけの現金もない、ということであれば、必然的に不動産を売却することになるでしょう。

 

一方で、それらの金銭的な問題をクリアできるなら、そのまま所有した方がいいのでしょうか。それとも売ってしまった方がいいのでしょうか。

 

建物の相続税評価額は、納税通知書に記載がある「固定資産税評価額」が用いられます。また、市街地にある土地は、国税庁の「路線価」×敷地面積が相続税の評価額とされます。

 

建物の評価額は、市場で実際に取り引きされている「実勢価格(時価)」の7割程度に設定されていて、土地は実勢価格の8割程度です。つまり、不動産が実際に売買される価格よりも、相続税における不動産の評価額の方が低くなります。そのため、不動産を売却せずそのまま相続した方が、相続税は抑えられることになります。

 

持ち家を売却せずに不動産のまま相続するとします。例えば、土地は4000万円、建物は1400万円で合計5400万円が相続税評価額です。これを売却すると、土地5000万円、建物2000万円になりました。売却価格は土地建物合計で7000万円。これはあくまで一例ですが、イメージとしてはおわかりいただけると思います。

 

さらにいえば、建物の固定資産税評価額は年々下がります。新築時よりも時間が経てば経つほど、実勢価格との差が開くので相続税も安くなるのです。

 

◆アドバイス

自己居住用の不動産よりも、賃貸用の不動産の方が評価額は低くなります。さらに、賃貸用は空き家の割合が低いほど評価額が下がります。一般的な感覚と逆となります。

 

 

平野克典

司法書士平野克典事務所 所長・司法書士

 

金子嘉徳

株式会社フロンティアグループ 代表取締役

 

 

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相続のお守り

相続のお守り

平野克典、金子嘉徳

総合法令出版

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