老後の生活、いくら必要なのか、ということを考える際に、「老後資金2000万円」という言葉がよく出てきます。そしてそのたびに「そんなに必要か?」と議論されます。そこでいま一度、「老後資金2000万円」の根拠を検証していきます。

高齢者夫婦…手にする「年金額」はいくらか?

「老後、2000万円不足する」の根拠については、不確実になものだったということがわかりました。また老後に手にする年金についても考えてみましょう。

 

厚生労働省『令和元年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況 』によると、厚生年金保険(第1号) 受給者の平均年金月額は14万6162円。また国民年金受給者の平均年金月額は5万6049円でした。

 

この金額、繰上げ受給も含みます。基本の65歳での受給開始の場合は、男性の場合、平均して約17万円程度の年金を手にすると考えられます。

 

【厚生年金保険(第1号) 老齢年金受給権者状況の推移(男性)】

「60歳」9万2548円

「61歳」10万9765円

「62歳」11万4206円

「63歳」8万9364円

「64歳」9万2916円

「65歳」17万1305円

 

厚生労働省『令和元年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況 』

 

一方で女性が基本の65歳での受給開始の場合は、平均して10万円強の年金を手にしています。

 

【厚生年金保険(第1号) 老齢年金受給権者状況の推移(女性)】

「60歳」8万2643円

「61歳」5万4108円

「62歳」5万4689円

「63歳」4万9105円

「64歳」4万9117円

「65歳」10万8813円

 

厚生労働省『令和元年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況 』

 

この結果から見ると、よくある高齢夫婦の場合、平均して27万円程度の年金を手にできそうだと推測できます。家計調査では夫婦平均22万円弱。ここでも差異が生じます。

 

厚生労働省『令和元年簡易生命表』によると、65歳男性の場合、平均余命は19.83歳。つまり65歳時点で平均して84.83歳まで生きられるということ。70歳男性であれば、平均余命は15.23歳。つまり70歳時点で平均して85.23歳まで生きられるということになります。さらに75歳時点の平均余命は12.41歳。87.41歳まで生きられる計算です(関連記事:『あと何年生きられる?年齢別「平均余命」早見表』)。

 

平均余命から考えると、65歳から5年経つと、平均して0.4歳長く生きられるようになり、10年経つと平均して2.58年、長く生きることを想定しなければならない、ということになります。

 

統計一つとっても、色々な見方ができます。「老後2000万円足りません」も真実ですし、「いや無職の高齢夫婦世帯は月々2000円の赤字」も真実です。大切なのは、これらを参考にして、各々にあった資産形成を考えていくこと、だと言えそうです。

 

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