ある日突然、老親が緊急搬送で入院という事態が起こります。介護は毎日のことなので、使命感だけでは長続きはしません。10年以上、仕事をしながら父母の遠距離介護を続けてきた在宅介護のエキスパートは、「介護する人が幸せでなければ、介護される人も幸せにはならない」と訴えます。入院や介護に備え、知っておきたい制度やお金の話から、役立つ情報、具体的なケア方法までを明らかにします。本連載は渋澤和世著『親が倒れたら、まず読む本 入院・介護・認知症…』(プレジデント社)から抜粋し、再編集したものです。
介護を含めて自分の人生…12年の境地
若い頃は社交的で人気者だった頑張り屋の母が、眉間にしわを寄せ鬼のような形相で暴言を吐く。認知症は症状がどう出てくるのかわからない。人格が変わる場合もある。戸惑い、混乱、悲しみ、やるせなさ、恨み、怒り……認知症の母がいることで、生活は介護優先に変わっていく。介護生活は恩と恨が渦をまく。
アルツハイマー型認知症と診断され、要介護1から5まで経験した。要介護3までは精神的に、それ以降は肉体的に疲労が増した。現在、ほぼ寝たきりの末期の状態。ここにきてやっと、認知症という病気になっても、私の顔を忘れてしまっても親は親であること。私自身も子としての役割はやり遂げつつあることに誇りと達成感を感じるまでになった。
介護も含めて全てが私の人生なのだと受け入れられるようになりつつある。12年かかっている。気持ちを変えようとしても簡単にできるものではない。自然と時間が解決してくれたように感じる。
渋澤 和世
在宅介護エキスパート協会 代表
【関連記事】
■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
■親が「総額3,000万円」を子・孫の口座にこっそり貯金…家族も知らないのに「税務署」には“バレる”ワケ【税理士が解説】
■恐ろしい…銀行が「100万円を定期預金しませんか」と言うワケ
■入所一時金が1000万円を超える…「介護破産」の闇を知る
■47都道府県「NHK受信料不払いランキング」東京・大阪・沖縄がワーストを爆走
「在宅介護エキスパート協会」代表
1964 年、静岡市生まれ、川崎市育ち。NEC 関連会社(現職)でフルタイム勤務の中、10 年以上に渡り遠距離・在宅介護を担う。両親の介護をきっかけに社会福祉士、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナーなど福祉に直接的・間接的に関係する資格を取得。その経験や知識を多くの方に役立てていただけるよう「在宅介護エキスパート協会」を設立、代表を務める。
2人の子どもに恵まれるも、両親が同時期に脳血管障害、認知症、骨折、肺炎で入退院を繰り返す。長年にわたり仕事、子育て、介護(遠距離介護4年・在宅介護8年)の「トリプルワーク」を経験。仕事をしながらの育児、介護にストレスが極限にまで達し、介護疲れを起こす。書籍や情報サイトなどを頼るも、「介護の常識」は、仕事や育児との両立をしている人にとっては、全てこなすことなど到底できない理想論であることを痛感する。その後、「自分でもできる介護」を自力で確立することを決意。アイデア発想講師としての知識を生かし、それまでの「完璧な介護」から「自滅せず親も家族も幸せになる介護」へと発想の視点を変え、現代人のための介護思考法を独自に研究する。
著者プロフィール詳細
連載記事一覧
連載親の入院、介護ですぐやること、考えること、お金のこと