「終活」とは、家族やまわりの人に迷惑をかけないように、葬儀やお墓の準備をしたり、相続対策をしたり、人生の最期に向けて準備をすることをいいます。しかし、「死ぬ準備をしたくない」と積極的になれない方もいます。そこで、終活の本当の目的や始めるタイミングについて解説します。※本連載は、海老原佐江子氏の著書『家族に迷惑をかけたくないあなたが認知症になる前に準備しておきたいこと』(WAVE出版)より一部を抜粋・再編集したものです。

終活の本当の目的…「自分らしい最期を考える」こと

「終活」とは、何のため、誰のためにするのでしょうか。

 

多くの方が「家族やまわりの人に迷惑をかけたくないから」と答えます。終活は、葬儀やお墓の準備をし、相続について事前に対策をするなど、人生の最期に向けて準備するものと考えているようです。

 

確かに、人は誰の世話にもならず死んでいくことはできません。とくに「おひとりさま」の場合は、「動けなくなったら、誰が面倒を見てくれるのか」「孤独死して誰も遺体を発見してくれなかったらどうしよう」「死後の後片付けや手続きは誰がしてくれるのか」などと、次々と不安が頭に浮かんでくるかもしれません。

 

「人に迷惑をかけないようにする」ことは、人間関係が希薄になっている現代社会では大事なことなのかもしれません。しかし筆者は、終活の目的をそれだけとは考えていません。

 

一般社団法人終活カウンセラー協会は、終活の定義を「人生の終焉を考えることを通じて、自分を見つめ、今をより良く自分らしく生きる活動」と定めています。つまり、終活の目的は「自分らしい最期を考える」ことであり、そのときまで自分らしくいきいきと生きることにあるのです。

 

私たちは、日々追われるように過ごしていて、人生が有限であることを意識することはありません。しかし、人生に終わりがあることを意識することは、これからの人生をどう生きるかを考えることにつながるのです。

 

あなたは、やりたいと思っているのに、つい先延ばしにしていることはありませんか?

 

筆者は20代のときに『ブエノスアイレス』という映画を観て以来、アルゼンチンの最南端の岬に行ってみたいとずっと思っていますが、なにしろ遠いので、なかなか実行に移すことができていません。しかし、人生の時間は限られています。地球の裏側まで旅する体力が自分にいつまであるのかはわかりません。

 

「死ぬ準備なんてしたくない」という方も、死ぬためにではなく、それまでの人生をどう生きるかを考えて、もっと充実した人生にしていくために、終活をするという視点をぜひ持ってほしいのです。趣味、旅行、仲間づくり、自分史の執筆……なんでもいいのです。

 

終活は将来、自分や家族が困らないようにするためだけでなく、やり残しのない人生を送り、今を生きる時間を豊かにするために行うものです。

 

誰もが若いころは、仕事や子育てが最優先で、やりたかったことは後回しになっているのではないでしょうか。しかし、時間や気持ちなどさまざまな面で余裕が出てきた人生の後半こそ、やりたいことを楽しむチャンスです。

 

「人生の最期に向けて準備をすること」

「人生のエンディングを考えることを通じて自分を見つめ、今をよりよく、自分らしく生きること」

 

この2つの視点を持って終活を進めて、後悔のない人生を楽しんでください。

 

海老原 佐江子

城南かがやき法律事務所 弁護士

 

 

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家族に迷惑をかけたくないあなたが認知症になる前に準備しておきたいこと

家族に迷惑をかけたくないあなたが認知症になる前に準備しておきたいこと

海老原 佐江子

WAVE出版

2025年には高齢者の約5人に1人がなるといわれるとおり、誰にでもリスクがある認知症。認知症になると、「預金が引き出せなくなる」「遺言を残せなくなる」「介護施設の入居契約ができなくなる」等、社会生活で大きな制限が出て…

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