土地の相続税評価額を大きく減額でき、節税効果が高い「小規模宅地特例」。なかには「申告義務はあるが、小規模宅地特例を使えば納税はゼロ円」というケースも。しかしそこには思わぬ落とし穴が潜んでいます。そこで相続・事業承継専門の税理士法人ブライト相続の天満亮税理士に、事例を交えながら「小規模宅地特例」にまつわる注意点を解説いただきました。

財産はほぼ自宅しかなかった…

平成27年の税制改正により、基礎控除額(=非課税の枠)が大幅に減額したことで、相続税の課税対象者が増えました。その一方で、「申告義務はあるけど、小規模宅地特例を使えば納税はゼロ円」というケースも非常に増えたのではないでしょうか。

 

ここでは、「小規模宅地特例を使えば納税がゼロ円」だと思っていたのに、実際にはそうならなかった、というケースをご紹介したいと思います。

 

甲さんは、都内でAさん(長男)家族と同居していました。そんな折、甲さんは亡くなられてしまいました。

 

甲さんが遺した財産は、ご自宅の土地(相続税評価額は9000万円)と、あとは家屋、その他財産が3000万円でした。

 

甲さんの配偶者(夫)は既に他界していたため、法定相続人はAさん(長男)、Bさん(二男)、Cさん(長女)の、計3人でした。

 

相続財産は合計で1億2000万円のため、基礎控除額の4800万円(=3000万円+600万円×3名)を大幅に超え、この時点で相続税の申告義務がある、ということになります。

 

しかし、同居親族が自宅の土地を相続することによって小規模宅地特例(特定居住用で80%減)を使えば、課税金額は4800万円(=9000万円の20%相当額+家屋その他財産3000万円)くらいとなり、相続税は発生しない、という見込みでした。

 

しかし、実際にはそうはなりませんでした。

代償金を支払う側は、取得財産からマイナスされる

「小規模宅地特例を使えば納税がゼロ円」ということであれば、同居親族であるAさんが土地を相続することに、BさんもCさんも異論はありませんでした。土地だけでなく、家屋その他財産3千万円についても、その内容や性質からしてAさんが相続するのが妥当である、というところまでは、法定相続人3名の意見は一致していました。

 

しかし、「Aさんが土地その他財産を相続するのは構わないけど、それなりのものを我々にもくださいよ」、というのがBさんとCさんの主張でした。

 

幸いなことに、Aさんは職業柄、高給取りということもあり、手許のお金には困っていませんでした。Bさん(弟)やCさん(妹)が言いたいことも分かるので、Aさん自身のお金から相当額を払うという、代償分割を行うことにしました。

 

つまり、甲さんの財産はすべてAさんが取得する代わりに、その代償として、AさんがBさんとCさんに一定額ずつを支払う、という遺産分割協議の方法です。

 

代償金の額は自由に設定できますが、相続で取得した財産の価額を超えてしまうような代償金を設定してしまうと、贈与税の問題が出てきてしまうので注意が必要です。

 

Aさんは、BさんとCさんに4000万円ずつの代償金を支払うことにしました。代償金の合計が8000万円なので、Aさんが相続する財産1億2000万円を下回り、特に問題が無いように見えます。

 

ところが、相続税の申告書上は、おかしなことが起こってしまいます。

 

なんか、おかしい…(※写真はイメージです/PIXTA)
なんか、おかしい…(※写真はイメージです/PIXTA)

 

注目のセミナー情報

​​【減価償却】11月20日(水)開催
<今年の節税対策にも!>
経営者なら知っておきたい
今が旬の「暗号資産のマイニング」活用術

 

【国内不動産】11月20日(水)開催
高所得ビジネスマンのための「本気の節税スキーム」
百戦錬磨のプロが教える
実情に合わせたフレキシブルな節税術

次ページ「小規模宅地特例」と「多額の代償金」で取得価額が…

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録
会員向けセミナーの一覧