いつの時代もなくならない相続トラブル。家族や親族の話し合いでなんとかなると思っていませんか? 岡野雄志税理士事務所のもとには、そんな「終活足らず」な方々からの相談が舞い込みます。本記事で紹介するのは「父の死後に債務を知った」事例。※プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

一人っ子長男…父の死後、信じられない連絡が!

Oさんは一人息子で、母親は数年前に他界し、病に伏した父親を妻とともに長年看病してきました。しかし、その甲斐もなく、父親もついに息を引き取ってしまいました。Oさんは父親の葬儀や納骨を終え、相続税の申告・納付も10ヵ月以内になんとか無事済ませました。

 

そんな父親を失った悲しみもようやく薄れはじめた、2年後のある日のこと。Oさんを仰天させる知らせが舞い込みます。それは、不動産競売の強制執行についての通知文書でした。

 

不動産競売の強制執行の通知が…(※写真はイメージです/PIXTA)
不動産競売の強制執行の通知が…(※写真はイメージです/PIXTA)

 

その不動産は、父親が亡くなる約2ヵ月前に他界した祖父の遺産でした。実は、祖父からの相続を承認するか、放棄するか、父親は決断する前に亡くなってしまったのです。父親の遺言書はなく、祖父の債務を知っていたのかどうか、今となってはわかりません。

 

少なくともOさん自身は、不動産の強制執行が行われるほど、遠く離れて住む祖父に債務があるとは聞いていませんでした。何も知らないままに、父親が祖父から相続した遺産を含め父親の全財産を相続してしまったのです。

 

債務とは、特定の人に特定の行為や給付を提供する義務のことで、具体的には「金銭の支払い」「物の引き渡し」「労力の提供」などです。それを受ける権利のある債権者は、金銭による支払いが行われない場合、不動産から強制的に回収する方法を取ることが多くあります。

 

「知っていたら相続放棄したのに……」Oさんは愕然としました。

 

主な相続方法には、相続財産のすべてを無条件で相続する「単純承認」、プラスの財産の範囲内でマイナスの財産も相続する「限定承認」、相続する権利自体を放棄する「相続放棄」があります。

 

どの方法を選択するか検討するための「熟慮期間」は、相続の開始があったことを知ったときから3ヵ月以内と定められています。

 

もちろん、相続財産の債務調査に時間を要したり、遺産内容が明確でなかったりした場合、家庭裁判所に熟慮期間の延長を申し立てることができます。しかし、祖父の相続の熟慮期間中に父親が亡くなったため、Oさんは債務の存在を疑う暇さえなかったのです。

 

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