米ドル量の増加に比べると「金の価格は安い」理由
金の価格を見るときは「米ドル」に対して見ることが大事です。なぜなら米ドルが世界の最も大きな基軸通貨だからです。
米ドル、ユーロ、日本円…すべてのお金はその国の政府と中央銀行が紙幣としてつくっています。その歴史はいまから100年ほどしかありません。それ以前は金や銀がお金としてよく使われており、その後に紙幣がつくられるようになりました。そして、現在の最も大きな基軸通貨は米ドルです。
米ドルがたくさん供給されると、金の価格が上がります。第二次世界大戦後から米ドルが世界の基軸通貨になりましたが、そのときから米ドルの供給と金の価格は、長期的に連動する傾向があります。
米ドルを供給できるのはアメリカの中央銀行であるFRB(連邦準備理事会)です。
つまり、金の価格を決めるのはFRBの紙幣印刷量ということ。これは最も大切な点です。FRBがどれくらいマネーサプライ(通貨供給量)を生み出しているかで金の価格が決まるということです。
世界の中央銀行の借金が増えていることはさまざまなデータで確認できますが、最も大事なのはアメリカのマネーサプライと金の価格との関係です。
図表3は金の価格と米ドルの量を示したものです。分子が金の価格、分母は米ドルの量を示しています。
このグラフを見ると、金の価格は、米ドルの量に対して歴史的に非常に低い水準だとわかります。
少し金に詳しい人は「金の価格はずいぶん上がっているじゃないか!」と反論するかもしれません。
たしかに2000年には1オンス=290ドル程度でしたが、2020年7月時点では約1900ドルです(図表4)。
それでも私が「金の価格は安い」と考えるのは、FRBが供給しているお金の量が膨大になっているからです。金の価格の上昇よりも何十倍もお金の量が増えているのです。その比率を見ると「金の価格は安い」といえるのです。
金の価格は現在の2〜3倍になってもおかしくない
金の価格推移を見ると(図表5)、1980年代に高騰しています。理由は高いインフレです。金は現物資産なので、物の価格が上昇すると金の価格も上がります。
金の価格が上昇する前にFRBは多くのお金を供給していました。その結果、インフレになり金の価格が上昇したのです。
図表3を見ると、過去約50年間は金の価格1に対して米ドルの供給量は「約2」、つまり2倍程度が平均になっています。
このことから考えると、ドルの供給量が増えれば金の価格も上昇することになります。
最近、金の価格は上昇していますが、それ以上にドルの供給量は増えています。金の価格とドルの供給量が1対2の水準まで金の価格が上昇する可能性はあります。具体的に言えば、「現在の水準から2、3倍程度に上がってもおかしくない」と私は考えています。
では、実際に金に投資する場合には何を買えばいいでしょうか。一番のおすすめは現物(コインもしくはバー)を買うことです。それを購入して金庫など、どこか安全な場所に保管しておくのです。もし家に置いておくのが不安であれば、銀行の貸金庫などに預けてもいいでしょう。