騙されがち…セールストーク「高配当株を買えばいい」はワナ

高配当の株式を保有して、自動的に配当を受け取り、その受け取った配当を再投資する。そうすれば自然とお金持ちになれる――。何年もウォール街で働いてきた高橋ダン氏は、高配当株の「マネーマシン」の考え方に異を唱えます。配当だけ受け取っても中長期的にお金を増やすことができないという。※本連載は、2020年9月出版の高橋ダン氏の著書『世界のお金持ちが実践するお金の増やし方』(かんき出版)より一部を抜粋・再編集したものです。

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「高配当株」への投資は注意が必要

高配当の株式を保有して、自動的に配当が受け取れる仕組みをつくり、受け取った配当を再投資していけば、どんどんお金が増えていき、自然とお金持ちになれる。そんな「マネーマシン」をつくりませんか?と勧める人がいます。配当、分配金、高利回り…どれも日本人が好きな投資なので魅力的に感じる人もいるかもしれません。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

しかしこれは、間違いです。

 

私は何年もウォール街で働いていましたが、その経験からしても、マネーマシンの考え方には同意できません。

 

実は、海外でも「高配当株を買えば、パフォーマンスが高くなる」というセールストークで金融商品を販売する金融機関が数多くあります。

 

そのとき、顧客に見せるチャートの一つがアメリカの代表的な株価指数S&P500の動き(図表1参照)です。

 

[図表1]S&P500の推移

 

チャートには2本のラインがあります。1本は受け取った配当を集めて毎年再投資した場合のパフォーマンス、もう1本は受け取った配当を再投資しなかった場合のパフォーマンスです。

 

これを見て、配当を再投資するのが有利、配当が高い株式を買うのが有利、「これが答えだ」と言う人がいるのです。

 

この話を信じてしまう人が多いので、金融機関は配当が高い商品を数多くつくっています。ETFも数多くあります。もしあなたが望むなら、30%程度の配当が得られる商品もあります(図表2)。

 

※2020年7月24日時点 出典:ETFdb.com/Top 100 Highest Dividend Yield ETFs
[図表2]高配当が得られるETF ※2020年7月24日時点
出典:ETFdb.com/Top 100 Highest Dividend Yield ETFs

 

S&P500の動きで見たように、配当を再投資したほうがパフォーマンスは高くなりますが、高配当株への投資は注意が必要です。

S&P500よりも採用すべき「ローテーション戦略」詳細

配当を再投資したほうがパフォーマンスは高くなることは説明しましたが、さらに高いリターンが狙える戦略があります。それが「ローテーション」です。

 

まず、2005年から2015年のチャートを見てみましょう(図表3)。この期間を選んだのは、2008年にリーマンショックがあったので、「大きな危機があったとき、どう動くか」を比較しやすいからです。

 

出典:Seeking Alpha
[図表3]株式と金のポートフォリオ 出典:Seeking Alpha

 

2本のラインは「株式と金」を組み入れたポートフォリオで運用した場合のパフォーマンスを示しています。1本のラインは株式3分の2、金3分の1のポートフォリオです。世界的なファンドのポートフォリオでは、3分の2程度を株式で運用し、3分の1程度を安全商品にすることがあります。これに近い形のポートフォリオです。

 

もう1本のラインは「ローテーション戦略」と呼ばれるものです。たとえば、前月に株式よりも金のほうがパフォーマンスが高ければ、翌月は金を増やします。これを毎月繰り返してポートフォリオを調整するのがローテンション戦略です。

 

参照:Seeking Alpha
[図表4]ローテーション戦略 参照:Seeking Alpha

 

S&P500の構成銘柄をすべて購入して、10年間保有した場合、配当も入れた年平均利回り(CAGR)は8.45%です。そのときのボラティリティ(変動率)は19.57%、最も価格が下がった最大下落幅損(Draw Down)は、リーマンショックのときで55.44%です。

 

しかし、さまざまなローテンションを入れると変わります。たとえば、SPY(米国株)、EFA(ヨーロッパ株に少し途上国が含まれる)、GDR(金)のポートフォリオでローテーションすると、パフォーマンスは大幅に向上します。

 

しかも、ボラティリティは変わりません。最大下落幅は46.24%なので、これも改善しています。S&P500に投資するより、ローテーション戦略を採用したほうが優秀であることがおわかりいただけると思います。

初心者も!投資の善し悪しは「シャープレシオ」で確認

高配当株投資に気をつけたほうがいい理由をさらに理解していただくために、シャープレシオ(Sharpe Ratio)を紹介します。これは投資の初心者でも絶対に知っておくべき指標です。

 

シャープレシオは数値が大きいほど、リスクを超えるリターンが得られていることを示します。つまり、シャープレシオを見ることで「効率良くリターンを得られているかどうか」がわかるのです。

 

シャープレシオの計算式は以下のとおりです。

 

シャープレシオ=(ポートフォリオの収益率ー安全資産の収益率)÷標準偏差

 

たとえば、一人の投資家が全財産で株式の1銘柄だけを買った場合は、大きな変動率になります。リーマンショックのときは60〜80%程度下がることもあったでしょう。株式市場全体が50%下がると、個別銘柄は指数より下がることもありますので、大きな変動率になるのです。つまり、標準偏差が高くなります。

 

もう一人の投資家は、10の商品に多様化したとします。株式で5種類、国債などの安全商品で2種類、貴金属で3種類です。では、もし2人の投資家のパフォーマンスが同じだったら、どちらを選ぶでしょうか。

 

もちろん、2人目でしょう。変動率が高くないのでストレスが低くて済みます。パフォーマンスが同じであれば、当然です。

 

ここがポイントです。

 

投資は、パフォーマンスだけを見て、「これが一番いい戦略だ」と決めることはできません。

 

それなら、誰かが株式を一銘柄選んで、集中投資して莫大な利益が出れば、それが最も優れた戦略になります。

 

しかし、ウォール街も世界の投資機関もそうは動いていません。みんな変動率、シャープレシオをチェックしているのです。

高配当の株だけの購入で「優秀な投資家」にはなれない

私がヘッジファンドにいたとき、顧客との面接で最初に聞かれたのは「あなたのシャープレシオはどれくらいですか」ということです。

 

1以上が合格ラインで、2なら素晴らしい、3はとても珍しい、と判断されます。しかし、3にはなかなかなりません。3にするためには、シャープレシオの計算式の分母=標準偏差を低くしなければならないからです。

 

標準偏差の低さは「バラツキが少ないこと」を意味します。これを実現するためには、運用成績がマイナスの月がほとんどなく、プラスを継続する必要があります。

 

標準偏差は運用成果に大きな影響を与えます。

 

ビジネススクールの「Yale School of Management」のレポートに重要なチャートが掲載されています。これは「Buyand Hold」つまり、株を買ってずっと保有していた長期投資の場合と短期投資を比較したものです。

 

出典:Yale School of Management Yale University
[図表5]イェール大学マネジメントスクールのレポート 出典:Yale School of Management Yale University

 

1990年代以降、アメリカの株式が急上昇していたときは、短期投資や取引のパフォーマンスのほうが圧倒的に強さを示しました。「Buyand Hold」では、112本のインデックスファンドを買って持ち続けましたが、それよりも、短期投資のほうが高いパフォーマンスが得られたのです。

 

なぜなら、シャープレシオが高い、つまり標準偏差が低かったからです。

 

お金を増やすときにはパフォーマンスが高いだけでは不十分。ボラティテイが高いとストレスが高くなります。自分の財産が80%下がる確率があるとしたら、誰が投資するでしょうか。

 

最も優れているのは「パフォーマンスが高くて、マイナスがないこと」。つまり、標準偏差が低いことです。

 

これを実現するには、高配当の株だけを購入して「マネーマシン」にするのは間違いだと思います。

 

「配当が確実に受け取れる」という考え方はメンタルトラップです。配当だけが守られていても、リーマンショックやコロナショックなどの経済危機が起きたとき、投資資産は大きく目減りします。アメリカの株式市場はコロナショックで1カ月の間に約35%、リーマンショックのときは1年半の間で約55%下がりました。

 

ですから、配当だけ受け取っても、中長期的にはお金を増やすことはできないでしょう。みなさんはメンタルトラップにかからないよう注意してください。

 

<まとめ>

●配当を再投資すれば長期的にパフォーマンスは高くなるが、高配当株投資には注意が必要。

●ローテーション戦略を活用すれば、リターンは上昇し、リスクは下がる可能性がある。

●リターンが高いだけでなく、シャープレシオが高い投資こそ優秀な投資と言える。

●株価が大きく下がってしまえば、高い配当を受け取ってもカバーできない。

 

 

高橋 ダン

投資系YouTuber

 

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東京生まれ、日本国籍。10歳までの多くを日本で過ごす。その後アメリカに移り、12歳で投資を始める。

21歳のときにコーネル大学をMagna Cum Laude(優秀な成績を収めた卒業生に与えられる称号)で卒業。

ニューヨークのウォール街で19〜20歳のときにサマーインターンとして働く。その後21歳でフルタイム勤務を開始し、投資銀行業務、取引に従事する。

26歳でヘッジファンド会社を共同設立し、30歳で自身の株を売却。その後シンガポールに移住。これまで約60ヵ国を旅し、2019年秋に東京に帰国。

2020年1月にYouTubeでの動画投稿を本格始動し、わずか3ヵ⽉でチャンネル登録者数が10万人を超える。

2021年5月現在、日本語のメインチャンネルが48.4万人、英語チャンネルが13.7万人。

著者紹介

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