リハビリ施設利用者の「お世話」「自立」は真逆の関係
介護保険導入で一躍脚光を浴びた介護業界に、私は問題を感じていました。介護を必要とする利用者に対し、立派な施設で細部まで気の利いた「至れり尽くせり」のサービスをすることによって、利用者の残存能力を衰えさせ、寝たきりにしてしまう。あるいは、それ以前の子どもの遊びのようなプログラムでお茶を濁している。そういう現実に腹が立っていたのです。
しかしもちろん、私が掲げた「リハビリ前置」を前提とした介護とリハビリの融合は、世間一般からしてみれば、なかなか理解し難いものだったでしょう。
当時、お世話をするという意味でとらえられていた介護と、利用者が自立のために進んで行うリハビリは、真逆にある考え方だからです。
私たち療法士が目指すのは、あくまで利用者の自宅での自立です。やりたいことが1人でできること。誰かの手を借りながらでも、生活が営めることなのです。
よく海外の発展途上国を支援するときに、「魚の捕り方を教えるか、魚をあげるか」という議論があります。まさにその違いです。
貧困に喘ぐ発展途上国を支援するのに、魚の捕り方を教えるのか、捕らえた魚をあげるのか。介護というのは、魚をあげるイメージです。一方リハビリは、魚の捕り方を教えます。釣り竿はこれがいいよ、船はこれがいいよ、糸を垂らす潮目はこのときがいいよとレクチャーして、療法士がいなくなっても魚が捕れるようにする。
それを学んでもいますぐに魚を食べてお腹一杯にはならないけれど、その代わり自分で捕れるように支援するのです。教え終わったら役目は終わるため帰っていく、というイメージです。
何歳になっても、希望を持って、自由に生活してほしい
もちろん利用者の自立ということを考えず、ただ居心地よく、満足いただくことだけを考えるなら難しいことはないのです。自立を考え、利用者のリハビリを行うということは、利用者の転倒などによるケガや誤嚥などのリスクもありますし、当然スタッフにもより多くの労力を必要とします。ある意味、利用者をずっと「座らせている」だけのほうが、ラクですし手間もないのです。
私はそれが分かっていましたが、利用者のためを思えば、時間はかかったとしてもリハビリ前置に徹するということを固く心に決めていたのです。
多くの介護施設では、利用者ができることまで危険だからと取り上げてしまいます。そうすることで利用者は、何でもやってもらおうという気になり、どんどん動かなくなり、寝たきりへと突き進んでいく。
私は最期の時間を寝たきりにさせたくない。
何歳になっても、なりたい目標や叶えたい希望をもち、なるべく人の手を借りないで自由に動き、生活して欲しい。読者の皆さんも、大切な自分の両親だと思って考えてみれば、当然そうしてあげたいと思うでしょう。
「本物ケア」は、ただ組織を広げていくことではなく、本当の「利用者ファースト」を模索するなかにしかない。
私は介護保険制度を機に混沌とする介護業界の様子を見ながら、改めて心に誓いました。
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