50代男性「せんせい、ぼくのびょうきはなおりますか?」モニター越しに伝えた心の底の絶望 (※写真はイメージです/PIXTA)

作業療法士として働いていた筆者は、自宅でケアを受ける50代の男性に出会います。絶望し、思い詰めていた彼でしたが、家族の献身により病状が好転。周囲の愛情と本人の希望、そして在宅でも「リハビリ」ができるなら――。介護産業の現状について、自身も作業療法士であり、在宅ケアサービス会社を運営する筆者が解説します。

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療法士としての使命を痛感した「強烈な出来事」

訪問リハビリを始めた当初、私にとっては療法士としての原点となるような、ある強烈
な体験がありました。

 

その体験があったから私はいまも訪問リハビリを続けているといってもいい。この仕事の本当の意味とその使命感、そして人さまのために「尽くす」ということの本質を、私はこの利用者との出会いから会得したといってもいいと思います。

 

それはこんな出会いでした。

 

「せんせい、ぼくのびょうきはなおりますか?」

 

ある日いつものように訪ねたとある家の一室で、意思伝達装置のモニターにそんな言葉が映し出されました。

 

目の前には寝たきりになった利用者が横たわっていました。その方は55、56歳くらいだったと思います。まさに人生の脂が乗りきった頂点で突然の病に襲われ、他者とのコミュニケーションの手段はこの意思伝達装置しかないという状態でした。一命はとりとめたものの、自分の生命を維持するにも他人の手に委ねなければならないという、重度の障害を負ってしまった方でした。

 

その人が必死に打ったモニターの文字を、私はいまも鮮明に覚えています。忘れることはできません。

 

その方は、身動きできない状態ながら、私に必死でこう語り掛けていたのです。

 

――この後遺症は回復するでしょうか?

 

身体は動かないまでも、その脳裏では必死に自分の身体と未来のことを考えている。

 

そのことがモニターの文字を通して伝わってきて、私は身も心も固まってしまったのです。

 

この人に私はなんと言ったらいいのか? 回復の見込みはないことをどう伝えたらいいのか? 愛想笑いなどできるはずもない。なにをどう伝えたらいいのか?

 

彼が自分の意志でできること。それはこのモニターに文字を写すことだけでした。

 

けれどこの方は、答えに窮している私を見て、次にこう打ってきたのです。

 

――しにたい

 

自分自身で唯一できることを使って表現された言葉。それが「死にたい」だった。

 

その文字を見て、私は思わず涙が出そうになりました。自分がこの人の立場になれば、やはり死にたいと言うのではないか。けれどこの人は、自分で死を選ぶこともままならない。

 

株式会社創心會 代表取締役

1965年生まれ、愛媛県出身。作業療法士養成専門学校を卒業し、精神科病院で作業療法士として勤務。その後、リハビリは病院などの医療機関で行うことが当たり前だった時代に、民間企業で訪問リハビリの取り組みを始める。

1996年に創心会在宅ケアサービス(現:株式会社創心會)を創業。退院後のリハビリが十分に行き届かず次第に悪くなっていく寝たきり高齢者が多くいることに問題意識をもち、介護とリハビリを融合させた「本物ケア」を確立。

現在は、訪問・通所・入所サービスを展開し、岡山県を中心に36拠点75事業所(2021年4月時点)をもつ。さらに日本の在宅医療・介護の在り方を見据え、農福連携による就労支援や、障害児の発達支援をはじめ、常に新たな取り組みに挑戦し続けている。

著者紹介

連載介護とリハビリの融合…「本物ケア」を目指す作業療法士の業界改革メソッド

本物ケア

本物ケア

二神 雅一

幻冬舎メディアコンサルティング

「寝たきり」や「リハビリ依存」の高齢者。必要以上のサポートを行う過度な介護が、高齢者から身体機能回復のチャンスを奪い、自立を妨げているのです。 20余年にわたり介護業界で活躍してきた著者が掲げる「本物ケア」は、…

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