「リハビリ=完治」ではなく、「リハビリ=自立」だ
寝たきり高齢者の増加とともに、リハビリから離れられない高齢者の存在も問題となっています。
世間ではいまだに「リハビリ=悪くなったところを元に戻す処置」という印象がありますが、実はこの思い込みが「リハビリ依存」の原因となり、自立を阻むものとなります。
「リハビリ=完治するもの」と思い込むと、リハビリすること自体が目的化してしまうのです。
なぜそこに問題があるのでしょうか?
それは2018年に改定された「作業療法の定義」の条文を読むと明らかです。
そこには「作業とは、対象となる人々にとって目的や価値をもつ生活行為を指す」とあり、そのための治療、指導、援助を施すのが「作業療法(リハビリ)である」と定義しています。
つまり後遺症などの障害が残っても、その人にとって意味のある作業(生活行為)ができるように支援することに重きをおき、自立を目指すこと。それが本来のリハビリなのです。
だから元に戻らない機能や身体の回復に拘泥するのではなく、少しでも自分で行動できる状態になったら「作業=生活行為・活動」に復帰させ、そして前述したように、「氷川きよしに会いたい」という願望を新しいホープ(目標)としてチャレンジしてもらうのです。
そうしないと、ある程度日常動作ができるようになっても、以前のような機能を取り戻せるまでリハビリに依存し、大切な人生の時間を無駄に過ごすことになってしまいます。
実際に医療機関でリハビリを受ける利用者によく見られるのは、「療法士のお蔭で身体が動くようになったから、このままリハビリを続けたい」と希望する方です。療法士も、自分の治療で利用者がよくなったという気持ちがあるため「共依存」の関係が生まれます。すると「してもらうリハビリ」に依存するようになり、結果的に実生活での居場所や自分の社会的な役割を見つける機会を失ってしまう――。
そんなことにならないよう、利用者に生きる自信を回復していただきたいのです。
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