(※写真はイメージです/PIXTA)

子供に贈与を検討した場合、子供にわからないように財産を贈与することはできるのでしょうか? 「信託」を活用する方法を、税理士が解説します。※本連載は、笹島修平氏の著書『信託を活用した新しい相続・贈与のすすめ 5訂版』(大蔵財務協会)より一部を抜粋・再編集したものです。

「信託行為」で規定しておけば、子供に知らせずに済む

一方で、信託契約は、委託者と受託者の間で結ばれます。遺言において信託をする場合は、遺言者が単独で作成します。

 

したがって、信託の効力が発生した場合、受益者となる者が受益者になったことを知る機会がないことがあります。そこで信託法において受託者は、新しく受益者になった者が受益権を取得したことを知らない場合には受益者に通知しなければならないこととなっています(信法88②)。

 

ただし、同条同項のただし書で、「信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる」と規定されています。つまり、信託行為(信託契約等)で、受託者が受益者に通知しないものと規定しておけば、子供が受益権を取得したことを隠しておくことができます。

 

多くの財産を所有していることが子供の教育上少なからず影響があることを気にされる方は少なくありません。財産にかかる課税法上の問題よりも、教育上の配慮を優先される方もいます。このような場合において、信託を活用すれば子供に知らせずに財産の承継をすることが可能です。

 

ただし、子供が受益権を取得したことを知っていようといまいと、子供が受益者になった場合には、贈与の税務申告が必要になります。本当は子供が贈与の申告をしなければならないのですが、子供は受益権を取得したことを知らないのですから、親(又は受託者)が子供に代わって贈与の申告をする必要があります。

 

なお、贈与税を親の現金で支払ってしまうと、当該贈与税相当の現金に対しても贈与税が課税されてしまいますので、信託財産から支払うことができるようにするといいでしょう。 

 

笹島 修平

株式会社つむぎコンサルティング 代表取締役

 

 

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信託を活用した新しい相続・贈与のすすめ5訂版

信託を活用した新しい相続・贈与のすすめ5訂版

笹島 修平

大蔵財務協会

信託は、従来型の相続や贈与による資産及び事業承継の限界を超えるものとして近年注目されてきている。 本書では、遺言書と信託契約の内容が抵触する場合や遺留分を侵害する信託の論点、信託の併合と分割の課税関係や再信託…

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